『明治維新 1858−1881』   坂野潤治・大野健一 著

明治維新 1858-1881 (講談社現代新書)

明治維新 1858-1881 (講談社現代新書)


【所感】
明治維新を、日本の近代化の出発点として、近代化できない途上国、近代化できたようにみえる中進国との比較を意識して、その構造や位置づけ、要因を、政治学の先生と開発経済学の先生が分析・共著した一冊。
・ベースが論文なんだけど、読みやすくて、すらー、って、3時間くらいで読了。でも、明治維新期の基礎知識がないと、ちょっと辛いかも。
・このテーマのいきつくところが、江戸時代というあたりは、どっかで聞いたことがあって、個人的に新鮮さがなくて残念。この部分を知らない人は、読んでもいい一冊。
・明治政府の柔構造については、55年体制自民党と似てるかも、と、ちょっと思った。
明治維新期は、興味があるので、結構、読んできたけど、ふと思えば、薩摩がメインのは読んでないことに気づいて、本書の影響もあって、読みたいな、と強く思う今日この頃。
・政治的な分析って、ま、興味が薄いからだけど、いまいちツマランとか思ったところで、経営学でいうビジョンとか理念とか価値観とか、そういうのって、ある種、政治学の領域でもあるんだー、と気づきがあって良かった、とかも、思えた。
・黒船来航が、早すぎる事もなく、遅すぎる事もなく、1850年代だったというのは、日本にとって絶妙なときであった、というのは、歴史の面白いところかも。国家の根本が変わるキッカケとしての、応仁の乱以来の事件とのこと。次の事件はなんだろうか?自分が生きてる間には、立ち会えないのかもしれんけど。

  
【目次】

第1部 明治維新の柔構造
  1 明治維新というモデル
  2 柔構造の多重性
  3 明治維新の指導者たち
  4 政策と政局のダイナミズム
  5 変革をもたらした条件

 
第2部 改革諸藩を比較する
  1 越前藩の柔構造
  2 土佐藩の柔構造
  3 長州藩の柔構造
  4 西南戦争と柔構造
  5 薩摩藩改革派の多様性と団結
  6 薩摩武士の同志的結合
  7 柔構造の近現代

 
第3部 江戸社会 − 飛躍への準備
  1 日本社会の累積的発展
  2 近代化の前提条件
  3 幕末期の政治競争とナショナリズム

 『イノベーション・オブ・ライフ』   クレイトン・M・クリステンセン 著

イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ

イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ


 
【所感】
・2012年の本。クリステンセンって、ほんと、すごいね。翻訳もよくて、さらっと、3時間くらいか、もうちょっとかな。

・なんというか、生きる気迫というか、生の迫力みたいな印象もあり。

・将来有望だった同窓生たちが、年々、不幸になっていくのは、なぜだろうか?から、始まったそうな。業界トップの優良企業が、新興企業になんで負けていくのか?に近い疑問設定かも。なので、メインテーマは、キャリア、家族、ダークサイドに墜ちない方法、の3点。

『イノベーションのジレンマ』にでてくる理論を、個人の人生、もしくは、個人レベルでの意思決定にあてはめてみたら、こうなりました、という一冊。経営者も、個人も、意思決定が大切で、そこで必要な考え方は同じだよね、で、組織の経営者も、家族の長も、組織への働き掛けとか、同じだよね、という感じか。『イノベーションのジレンマ』を読んでから、ちょっと時間が経ってるから、懐かしくて、個人の人生をケースとした『イノベーションのジレンマ』の復習みたいな感じ

『ワーク・シフト』の直後に読むのに、丁度、良い感じ。どっちか一冊を読むなら、こっち。両方読むなら、『ワークシフト』→『イノベーション・オブ・ライフ』の順番がお勧めか。『ワーク・シフト』は今とか、この10年の本だけど、『イノベーション・オブ・ライフ』は、時代を超える(可能性のある)本、かな。でも、『イノベーションのジレンマ』を知らないと、本書だけだと、理解が及ばないというか、わかりにくい、かも。

・仕事とか就職で悩んでる、悩むであろう、学生さんとか、たぶん、中学生とか高校生とかで読んどくといいかも。もちろん、大人は必読か。『イノベーションのジレンマ』を知ってる人なら、その理論で、自分をケースとして、考えてみてから、本書を読むと、よりグッド。


 
【目次】

序 講
第 1講 羽があるからと言って・・・
     ・「何を考えるべきか」と「どう考えるべきか」の違い
     ・わたしには意見がない、理論には意見がある
     ・理論を人生に役立てる

第1部 幸せなキャリアを歩む
第 2講 わたしたちを動かすもの
     ・動機付け要因と衛生要因のバランス
第 3講 計算と幸運のバランス
     ・創発的戦略と意図的戦略のバランス
     ・仮定を検証することの大切さ
第 4講 口で言ってるだけでは戦略にならない
     ・資源配分のパラドックス
  
第2部 幸せな関係を築く
第 5講 時を刻み続ける時計
     ・良い資本と悪い資本の論理  成長は気長に、利益は性急に
     ・人生の投資を後回しにするリスク
第 6講 そのミルクシェイクはなんのために雇ったのか?
     ・解決すべき用事
     ・犠牲と献身
第 7講 子供たちをテセウスの船に乗せる
     ・未来をアウトソーシングしてはいけない
第 8講 経験の学校
     ・結果評価ではなくプロセス(経験)評価
第 9講 家庭内の見えざる手
     ・企業文化はどのように形成されるか
     ・わが家の行動指針
  
第3部 罪人にならない
第10講 この一度だけ・・・
     ・限界的思考の罠
     ・100%守る方が98%守るよりたやすい
終講

 『ワーク・シフト』   リンダ・グラットン 著

ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉

ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉



【所感】
・2012年の本。翻訳もよくて、読みやすかった。まだ読んでないけど、ゴールデン・カラーとかも、こういう話なんじゃないかと。

・社会変化の方向性とか、時代の分析とかは、『東大講義録』のが、いいかも、日本人だと。表現としては、講義録もありだし、本書のような小説仕立て+解説というのも、それぞれにいい感じ。

・今の日本だと、時間消費とか経験への消費って、実体験として変化を感じるけど、イギリスでもそうなのね、というのは、面白かった。

・未来のことを語るとき、プライベートのことを語るとき、子供のインタビュー動画、というのは、使えるな、と思った。生保のCMみたいだけど、定番というか外れないというか。

・ひとことで言うならば、インターネットでコミュニケーション・コストが劇的にさがって、世界中がライバル、ってことかしらん。かつ、長寿化 と 物財過多非満足で、ライフワークバランス みたいな感じ、か。逆に言えば、今までのコミュニケーション・コストって、どんだけ高かったんだ、という話か。以前から、デザイナーとか建築家とか、ごく一部では、ワーク・シフトな人々はいたけど、そういう人々がもっと、たぶん、劇的に増える、ということなんでしょう。

・大企業にも入れず、ワーク・シフトできない人は、どうすりゃ、いいの? とは思ったけど、どうしようもない、ということなのかもだけど、下手をすると、シフトできない人の方が多いかもしれん。日本だと、日本語の壁のおかげで、今の現役世代くらいは、逃げ切れたりするのかも。軽くしか触れてないけど、貧困の問題が、今までは、国とか地域とかの話だったけど、個人レベルにおりてきてしまう、1億総中流とかって、もう無理、になっちゃうわけで。

・そうそう、貧困の話って、分配のミス、とか、システムの話なんだなぁ、と最近思うようになってきた。

・ハーバードとかの卒業生が、優秀なやつほど起業に走ってる、とかのニュースも、この流れなのかも。

・だとしたら、今の子供世代は、親の言うこと聞いちゃいけないな。ぶっちゃけ、こういうのが見えてきた今の時代に、今の学校で学ばされること、って、ほとんど無意味かも。というか、無意味じゃないと信じてたり、無意味の意味を勘違いして無意味と思ってる人のが多いか。ここは、ビジネスチャンスかも。

・しかし、で、お前はどうするのさ、と言われるとちょっと困るか。大地震が近い将来くるから、と言われても、引っ越してないのと同じだ。。。


 
【目次】

プロローグ 働き方の未来は今日始まる
序   章 働き方の未来を予測する
 
第1部 なにが働き方の未来を変えるのか?

 第 1章 未来を形作る5つの要因
        要因1 テクノロジーの進化
        要因2 グローバル化の進展
        要因3 人口構成の変化と長寿化
        要因4 社会の変化
        要因5 エネルギー・環境問題の深刻化
 
第2部 「漫然と迎える未来」の暗い現実

 第 2章 いつも時間に追われ続ける未来 −3分刻みの世界がやって来る
 第 3章 孤独にさいなまれる未来 − 人とのつながりが断ち切られる
 第 4章 繁栄から締め出される未来 − 新しい貧困層が生まれる
 
第3部 「主体的に築く未来」の明るい日々

 第 5章 コ・クリエーションの未来 − みんなの力で大きな仕事をやり遂げる
 第 6章 積極的に社会と関わる未来 − 共感とバランスのある人生を送る
 第 7章 ミニ起業家が活躍する未来 − 創造的な人生を切り拓く
 
第4部 働き方を<シフト>する

 第 8章 第1のシフト − ゼネラリストから「連続スペシャリスト」
 第 9章 第2のシフト − 孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」へ
 第10章 第3のシフト − 大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ
 
エピローグ 未来のために知っておくべきこと

  
【キーワード】

要因1 テクノロジーの進化
  1 テクノロジーが飛躍的に発展する
  2 世界の50億人がインターネットで結ばれる
  3 地球上のいたるところで「クラウド」を利用できるようになる
  4 生産性が向上し続ける
  5 「ソーシャルな」参加が活発になる
  6 知識のデジタル化が進む
  7 メガ企業とミニ起業家が台頭する
  8 バーチャル空間で働き、「アバター」を利用することが当たり前になる
  9 「人口知能アシスタント」が普及する
 10 テクノロジーが人間の労働者に取って代わる

要因2 グローバル化の進展
  1 24時間・週7日休まないグローバルな世界が出現した
  2 新興国が台頭した
  3 中国とインドの経済が目覚しく成長した
  4 倹約型イノベーションの道が開けた
  5 新たな人材輩出大国が登場しつつある
  6 世界中で都市化が進行する
  7 バブルの形成と崩壊が繰り返される
  8 世界のさまざまな地域に貧困層が出現する

要因3 人口構成の変化と長寿化
  1 Y世代の影響力が拡大する
  2 寿命が長くなる
  3 ベビーブーム世代の一部が貧しい老後を迎える
  4 国境を越えた移住が活発になる

要因4 社会の変化
  1 家族のあり方が変わる
  2 自分を見つめ直す人が増える
  3 女性の力が強くなる
  4 バランス重視の行き方を選ぶ男性が増える
  5 大企業や政府に対する不信感が強まる
  6 幸福感が弱まる
  7 余暇時間が増える

要因5 エネルギー・環境問題の深刻化
  1 エネルギー価格が上昇する
  2 環境上の惨事が原因で住居を追われる人が現れる
  3 持続可能性を重んじる文化が形成されはじめる

第1のシフト − ゼネラリストから「連続スペシャリスト」
  なぜ、「広く浅く」ではだめなのか?
  連続スペシャリストへの道
  高い価値をもつ専門技能の3条件
     ・付加価値・希少・模倣困難
  未来に押しつぶされないキャリアと専門技能  
     ・草の根市民運動家社会起業家・ミニ起業家
     ・生命科学・健康関連、再生可能エネルギー関連
     ・創造性イノベーション関連
     ・コーチング・ケア関連
  あくまでも「好きな仕事」を選ぶ
  高度な専門技能を身につける方法
     ・職人のように考える
     ・子供のように遊ぶ
  移動と脱皮で専門分野を広げる
  セルフマーケティングの時代
  自分の刻印と署名を確立する
  カリヨン・ツリー型のキャリアを築く

第2のシフト − 孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」へ
  未来に必要となる3種類の人的ネットワーク
  ポッセを築く
  ビッグアイデアクラウドを築く
  自己再生のコミュニティを築く

第3のシフト − 大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ
  バランスのとれた働き方を選ぶ勇気
  仕事の世界の「古い約束事」とは?
  「古い約束事」が崩れ始めた
  お金と消費に最大の価値を置く発想
  なぜ、私たちはお金と消費が好きになったのか?
  消費より経験に価値を置く生き方へ
  重要なのは選択肢を理解すること
  自分で自分の未来を築く
  <シフト>を実践する

 『永遠の0』   百田尚樹 著

永遠の0 (講談社文庫)

永遠の0 (講談社文庫)


【所感】

・読みやすくて、面白くて、一気に読んでしまった。ちょっと凄いかも。受賞するのもわかるかも。途中、地図みたりとかしてたから、時間的には、5時間とか。

・メインの舞台は、太平洋戦争時の海軍航空隊、ゼロ戦とか特攻隊。

・特徴のひとつは、作品の作り方か。孫が自分のルーツを探る、といったちょっとした謎解きみたな仕立て。気持ち、セカチューっぽいか。その謎解きを中心に、作者が放送作家だっただけに、テレビドラマ化を意識したのか、12章あって、それが、ちょうどいい区切りになってる。もちろん、表現も読みやすい。時代背景や技術的なことを知らない人にもわかるように入ってる解説がなかなか絶妙。戦争を知らない、現代を生きる孫に、戦争の生き残りが語るという仕立ても、この辺の背景解説に一役買ってる。

・もうひとつは、90年代くらいか、00年代以降の太平洋戦争物、特に映画になってるのは、だいたい、この流れであるけど、現場側で戦争に参加した人達で良い人・ピュアな人って、いろいろあるけど、天皇がどうのとか、大東亜共栄圏がどうの、というよりも、最後は家族を守るため、という動機付けで、こんな感じだったんじゃね?というのは、踏襲してる、か。そういう意味では、『男たちの大和』とか同じ文脈なのかも。でも、その愛の物語として、ほかの戦争物より、よくできてる、その辺も、放送作家さんらしい気もする。というか、愛の物語のほどよいスパイスに、太平洋戦争がある、といった感じか。

・でも、たぶん、太平洋戦争物で、これから描かないといけないのは、この愛の物語よりも、メディアと大衆、かなー、とか思った。政府首脳、政治家、官僚、軍人の上層部の話は結構あるのだけど、その下というか、ミドルとか現場よりのあたり。メディアを含めて、その雰囲気を形成してる層。その空気を形作ってた人達というか。それに迎合してた人達というか。もっといえば、政府とか軍人に加えて、市中の人とかもかなー。戦前の日比谷焼討事件の参加者とか、戦中に、お国のため、天皇陛下万歳って、腹の中では笑いながらやってた人、さらに他人に強要までしてた市中の人、戦後は、マッカーサーに手紙書いたような人(の一部)。『硫黄島からの手紙』の二宮くんの役とか、近しいか。でも、コンテンツとしては、映画はもちろん、小説とかでも、地味だから、成り立たないかも。

・特攻作戦が続けられた理由は、やっぱ、ここでも、ちょっと腑に落ちない。なにかで、読んだのが、当時、海軍の偉い人の次のレイヤーくらいの人が、ミッドウェー後に、もう無理だとおもって、でも、自分が上申しても戦争が終わるわけでもなくて、逆に、自分が軍法裁判にかけられちゃうから、特攻という作戦でもなんでもないことをやって、新聞でその活躍?!を大きく出せば、いつか陛下の耳にはいって、海軍がこんなことをやってるようじゃ、もうダメなんだな、戦争、止めろ!って言ってくれるというのを期待して、それまで続けたし、その成果?は、必ず新聞に出した、というのが、意外と本当なのか、と思う今日この頃。

・もし、これが特攻を継続し続けた理由だとしたら、現代の大きな組織で、つぶれそうなところ、とかと、全く同じだなー、とか思うし、同じだなー、と思うからこそ、ありえるかも、と思う。現代日本での、大企業でやばいところが、やばいままに変われないのとか、地方の疲弊とか、公務員がダメダメなのとか、全く同じ構図なんじゃかいか、とか。

 『タックス・シェルター』   幸田真音 著

タックス・シェルター (新潮文庫)

タックス・シェルター (新潮文庫)

 
【所感】
経済小説というカテゴリーに入るかもしれないけど、複雑なところはあんまりなくて、人生におけるお金、とか、税金と人生、とか、そんな感じのヒューマンドラマな一冊。
 
・将来、俺は、稼ぐぜー、とか、親が大金持ちで相続すると大変、といった人が、その心積もりをするときに読むのとかよさげ。

・昔、「普通に、お金で買える幸せも、買えない。。。」って言ってた人がいたけど、生きてくのに必要な分以上のお金をもっちゃうのは、不幸のはじまり、というか、生きてく以上のお金をもったときのお金の使い方、って、ほとんどの人は知らないわけで、なんというか、難しい。
 
国税官をはじめとした税務署にお勤めの人は、必要な仕事だし、大変な仕事で、頭があがらないと思うのだけど、一般社会で、例えば、合コンとか、子供の学校とか、ふとしたプライベートな場で、かなり嫌われてるのは知らんかった。っちゅーか、国税官で、幸せな人って、いるのかしらん。仕事も大変だし、社会の目も厳しいし、給料というかそれなりに安定してるけど、結構、みんなして幸せ度合いが少ない職業なのかも、と心配になった。

・ただ、個人的には、徴税する係りになりたい、なら、もしくは、その現場を知ってるなら、せっかく優秀なんだから、そのイタチゴッコのプレイヤーになるのではなくて、その制度を改善する係りになってもらいたいとも思う、かも。
 
・金融マーケットがここまでグローバル化しちゃうと、国税というか、国家は、ちょっと後手だし、厳しいかもなー。

 『アジアの隼』   黒木亮 著

アジアの隼 上 (幻冬舎文庫)

アジアの隼 上 (幻冬舎文庫)

 
アジアの隼 下 (幻冬舎文庫)

アジアの隼 下 (幻冬舎文庫)


 
【所感】
・1994年から1998年頃、東京、ハノイ、香港あたりが主たる舞台。制度金融とかプロファイとか。懐かしい。

・時代的に、途上国の民活プロジェクト、アジア通貨危機長銀崩壊、ジャパンプレミアムあたりのイベントあり。金融的には、かなりホットな時代だったか。投資銀行が、世界的に?というか日本的に、一気にメジャープレーヤーになってったのも、このあたりか。ある意味、間接金融最後の栄華、だったのかもしれん。

・商社とか銀行とか投資銀行とかいって、(アジアとかの)海外(途上国)向けのプロジェクトファイナンスとかやりたい学生さんとか転職準備中の人が読むと良いのかも。

・この小説だと、プロファイを打つ金融屋さんが、結構、活躍してるのだけど、制度金融で金融屋が活躍するイメージが無かったので、ちょっと意外。発電所とかだと、金融屋も頑張るのかな。どっちかってーと、商社とかメーカーが頑張る種類の案件で、金融屋は、後から出てきて、はいはい、そういう事ならお金、貸してあげてもいいよ、くらいの偉そうなイメージだった。いずれにせよ、金融屋のフィーの取り方は、エグイところ。そんな多額の資金を提供できる組織が無いだけに、寡占の為せる技か。

・90年代のベトナムのシーンが多いのだけど、この頃のベトナムでも、ホテルで、ネズミの出ない部屋にしてくれ、そんな部屋はない、とかいう会話が成り立ったのか、っと。仕事の出張で、ネズミと同部屋は辛いところ。

・今おもえば、90年代くらいまで、海外への旅行とか生活が、海外っぽい最後の時代だったか。今は、都会だと、コンビニもあるし、ネットもあるし、日本飯屋・日本食材屋も大抵あるから、不便さが減ったというか、どこ行っても日本と変わらないレベルの生活が容易に確保できる。昔、海外、行くと、なにかと不便だったし。でも、それが海外生活っぽくて良かったけど。

 『非属の才能』   山田玲司 著

非属の才能 (光文社新書)

非属の才能 (光文社新書)


【所感】

・漫画家の山田玲司が、たぶん、自殺を考えてるような人に宛てて書いたメッセージ、かな。自殺までいかなくても、周りの人とうまくいかなくて、孤独を感じてる人へのメッセージというか。

・読みやすくて、結構、さらっと、2時間とか3時間で読了。

・気持ち的には、非属 x 協調 が目指すべきところ、かな。あと、自分で考えて信じる方向へ動け!ということか。

・大人になってからだと、お金というか、どこにいても、属さないでもお金を稼げる自信がないと非属しにくいけど、若いときに非属の才能があれば、そこに辿り着く可能性が高い、とも読めるか。

・普通の人が、普通でない人を仲間はずれにしたり、同調を強要するけど、群れを動かすにもまた変わり者、というのが、面白いところか。普通の人って、勝手なもんだ。変わり者と非属の者って、微妙に意味が違うのかも。平時か戦時か、という背景もあるか。今は、戦時に突入したと思う。


 
【気になった文言】

・才能というものは、”どこにも属せない感覚”のなかにこそある

・どこにも属せない感覚を信じ続けた

・「みんなと同じ」時代は終わった・・・その多くは「協調」などではなく「同調」の圧力・・・「才能のない人間」として消耗されてしまう

・定置網にかかった人生でいいのか

・本当に魅力的なものは道のないところにある

・「変わり者」が群れを動かす

・進化はエラーからはじまる

・独創性は孤立が作る

・和をもって属さず

・得する変人と損する変人
   私は変わってるんです病
   自分はいつも正しい病
   メジャーだからだめ病
   俺は偉い病