『降臨の群れ』 船戸与一 著
- 作者: 船戸与一
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2007/08/21
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- 作者: 船戸与一
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2007/08/21
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【所感】
・例のごとく、すっかりはまってしまってる船戸作品。登場人物の名前が覚えられなくて、なんどか読み返してたら、結構時間がかかってしまった。
・本作の舞台は、2002年のインドネシア アンボン島。911の後、バリ島のクラブで爆破テロがあった頃。インドネシアの多民族性というか、海洋国家というか、構造的な課題が、辺境で爆発するといういつもの船戸ワールド。ただ、今回は、自給自足経済と市場経済の狭間ではなく、宗教と民族の狭間といったあたりか。
・アンボン島、作中にも出てくるけど、古くは1600年代のアンボイナ事件で、日本人傭兵が処刑されていたり、ちょっと前だと、2次大戦のときに海軍の基地があったとか。微妙に日本人とも繋がりある島らしい。
・中華系の住民も結構いるらしく、でも、華僑と中華系インドネシア人は違うんだ、という件があって、そーなんだー、とダブルで新鮮。
・治安が回復してるなら、ちょっと行ってみたいかも。グーグルマップでみたら、想像してたより綺麗な町っぽい。アンボンでなくても、東南アジアの島で、昔、オランダとかイギリスの拠点になってたようなところで、建築物でその名残がみられるような小さめの町、行ってみたい。
・似たような理由で、中世以降太平洋戦争以前とかで、東南アジアに移住していた日本人の話も、読んでみたい。
『日本辺境論』 内田 樹 著
- 作者: 内田樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
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【所感】
・もともとは、日本の中の辺境の論かと思って手にしたのだけど、実は、日本全体が”辺境”だからこそ今に至っているという本。
・哲学っぽい話のところは、ややこしくて、何度か寝落ちしてしまったけど、辺境という切り口で、日本の成り立ちをスパッと切ってくれた爽快さは気持ちよかった。
・武士道は、「或るものに対して或るもの」という報酬の主義を排する。・・・努力と報酬の間に相関があることが確実に予見せらるることは武士道に反する、・・・。これは、・・・「学び」の基本です。もちろん、世界の賢者はこのことを一般論としては熟知しており、・・・。けれども、この構えを集団的な「刷り込み」によって民族的エースとにまで高めようという無謀を冒したのは日本人(とユダヤ人)くらでしょう。
・日本の辺境性から、地方は中央に比較すると、二重の辺境性をもってるということかな?標準語とか中央の方言と地元の方言、とかも含めて。というか、中央集権制に適した素地のあるというか、逆に、地方分権には向かないメンタリティというか文化性というか。
・でも、個人レベルでは、そういった中央を構成する人たちは、地方出身だったりするから、集団と個人で、この辺境性の現れ方が異なるのかも。というか、思考の種類とか型というよりは、コミュニケーションの型なのか。もしくは、辺境性に打ち勝つ個をもってるような人が、中央で国内向けには伸していく、ということか。あの田中角栄でさえも、中国にいったときは、周恩来との握手のときに、手が震えてたって、聞いたような。
・中国を中心とした日本の辺境性、韓国・ベトナム・モンゴル・中国内辺境地域との違いというか同質性というか、語って欲しかったかも。というか、ここ100年とかの歴史的な流れの中で、中華の辺境性が残っているのが、日本だけ、もしくは、顕著に残ったのが日本だけ、ということなのかも。
・逆に、ヨーロッパとか、インドあたりとか、中東あたりとか、の辺境性って、どうなのかな?
・たぶん、読者の大勢が読後に感じたであろうことだけど、自分って、やっぱ日本人なんだなぁ、としみじみ思った次第。
・帰国子女とかで、この辺境性が希薄な人が、リーダーになっていくのか、日本はやっぱみんなと同じ辺境性を体現してる人じゃないとダメなのか。組織のカルチャーとかビジョンにもよるのだろうけど。
【目次】(細目は抜粋)
1.日本人は辺境人である
日本人はきょろきょろする
オバマ演説を日本人ができない理由
他国との比較でしか自国を語れない
「お前の気持ちがわかる」空気で戦争
ロジックはいつも「被害者意識」
「辺境人」のメンタリティ
明治人にとって「日本は中華」だった
とことん辺境でいこう
2.辺境人の「学び」は効率がいい
『武士道』を読む
無防備に開放する日本人
便所掃除がなぜ修業なのか
学びの極意
3.「機」の思想
どこか遠くにあるはずの叡智
極楽でも地獄でもよい
「機」と「辺境人の時間」
武道的な「天下無敵」の意味
敵を作らない「私」とは
きめ細かく身体を使う
「学ぶ力」の劣化
「世界の中心にいない」という前提4.辺境人は日本語と共に
「ぼく」がなぜこの本を書けなかったのか
日本語の特殊性はどこにあるか
日本語がマンガ脳を育んだ
「真名」と「仮名」の使い分け
日本人の召命
『ハルビン・カフェ』 打海文三 著
- 作者: 打海文三
- 出版社/メーカー: 角川書店
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【所感】
・近未来の福井県のある町で、大陸の動乱を逃れるため大量の難民が押し寄せ、中国・韓国・ロシアのマフィアが覇を競う無法地帯が舞台。無法地帯化してるので、警官の殉職が相次ぎ、ブチ切れた警官たちが、法に基づかない報復を行うと、こんな感じ?という設定。2002年の作品。
・字が小さめで、登場人物が多くて、昔の話と今の話がいったり来たりするので、ややこしいというか読みにくいのだけど、話のテンポが良くて、謎解きの面白さが秀逸で、寝る間を惜しんで一気読み。
・集団テログループが老いていくという点では、日本赤軍?とかの話をちょっと思い出した。
・主人公というかフィクサーというか、が、ハイパー人垂らしという設定がなんとも。これ読むと、人垂らし能力 x 健康・体力 x (ちょっとした)専門能力・知識 って、どの分野でも、伸し上がっていくための最強組み合わせかも、とか。島耕作も、人垂らし能力、高かったしなー。
・新宿とか、難民はいないというか少数だけど、各国のマフィアが暗躍してそうで、警察の人って、報復が云々とかってならないのかな?マフィアという組織が一定の規律の中で、みんなが越えちゃいけない一線を、絶妙なバランスで、キープできてるとかか。そういう意味では、難民多数というのが、無法地帯の必要要素なのかもしれん。
・この話、映像化してくれたら、見るなー、きっと。登場人物が多いから、2時間の映画とかよりも、連ドラが嬉しい。
『エネルギー』 黒木亮 著
- 作者: 黒木亮
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/09/15
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- 作者: 黒木亮
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- 作者: 黒木亮
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【所感】
・その名の通り、日本のエネルギー源(石油)の調達に奔走する商社マンを中心に、エネルギー業界でもがくエリート達のお話。
・時代は、1997年から2007年、舞台は、イラク、サハリン、シンガポールを軸に、日本、欧州、ロシアあたりまで。
・商社マンになりたい学生さんとか、電力会社にお勤めの若手が、商社ってこの業界で何やってんだ、とか思ってる人がが読むと、良いのかも。
・やっぱ、エネルギー案件は、上流から下流まで、どこを切っても、動く金額がでかくて、案件が長い。コモディティの最たるものか。商社だと個人の知恵が、交渉かファイナンスでしか使えないから、そのどちらかに興味がある人はフィットする業界か。
・今だと、シェールガス、原発全期停止、メタンハイドレート、藻、地熱などなど、テーマが変わってきてるから、この話の続編とか書いてくれると読んでみたいところ。メタンハイドレートか藻か地熱が、すげー化けると面白そう。
・日本はこれまで石油が無かったから、その利権が身近なイザコザの元になってこなかったけど、それが逆に良かったというか、今の日本っぽさを構成してる一つの要因な気もしてきた。すげー金持ちがいない、とか。
『マネー・ボール』 マイケル・ルイス 著
- 作者: マイケル・ルイス,中山宥
- 出版社/メーカー: 武田ランダムハウスジャパン
- 発売日: 2006/03/02
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【所感】
・前から評判も聞いてたし、映画にもなってたから、どっかで読みたいと思ってた一冊。翻訳もテンポもよくて、一気に読破。
・(映画はまだ見てないけど)ブラピのイメージで主人公を読んでて、全然違和感なし。
・クリステンセンの言う”価値基準”を変えるのって、かくも大変なことなのね、という感じか。アスレチックスの小さなフロント組織であっても、一声10年くらいはかかってるわけで。
・アスレチックスのケースは、投資効率を求める球団オーナー、今までの球団経営に違和感を感じていた主人公のGMが改革体質の持ち主だった、そのGMを育てた前のGM、あたりで、人繰りとして、やや奇跡的な出会い、というか、ラッキーはあったか。出会うべくして出会った人たち、とでも言うところか。
・全ての発端になる趣味で野球データ分析をしていた人の存在とかは、アメリカの懐の深さというか、先進国の歴史というか、食うこと以外のために生きる人生、(趣味で)知的興奮をおっかけても食っていける経済力というか、感じる次第。食うこと以外にどんだけ時間が使えるか、って、先進国の定義として、どうだろう。
・アメリカの野球業界のような閉塞的な業界って、日本だけ無く、世界中にあるのね、組織が加齢してくのって、普遍的なものなのね、っと。終身雇用と組織の加齢による硬直化って、関係無いのかも。いずれにせよ、歴史ある○○って、しばらくは、ネガティブな印象でみちゃうな。
・とりあえず、近いうちに、映画もみたい、強く思う。
『虹の谷の五月』 船戸与一 著
- 作者: 船戸与一
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2003/05/20
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- 作者: 船戸与一
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【所感】
・南の国への旅行のお供に、船戸作品。
・今回の舞台は、90年代後半のフィリピン セブ島。リゾートの匂いしないどころか、電気も通っていない、道路もあるかないかの(ほぼ)自給自足地域の超田舎。でも、教会はあるのが、凄い。
・フィリピンの反政府勢力の限界というか凋落を背景に、自給自足地域に生きてきた人たちの資本主義経済との接点や戸惑いを感じる一冊。
・15年ほど前のフィリピン セブ島でも、田舎に行くと、まだ自給自足経済が基本で、資本主義経済との出会いで混乱する感じらしい。日本では、いつごろか、60年代とか70年代くらいか、には、資本主義経済というか流通経済に生きる人の方が多数になっていた印象あり。日本での、自給自足経済から流通経済への移行における人々の混乱って、どんな感じだったのだろうか?急激ではなく、規模も小さかったから、それほどでも無かったのか?
・仕組みの変化に加えて、貧困の問題がベースとしては大きいか。
・2013年において、流通経済よりも自給自足の方に軸足をおいて生きてる人は、どのくらいの人がいるんだろうか?この割合が90%を超えるとかが有る意味、先進国の定義かも。
『上海ジャパニーズ 日本を飛び出した和僑24人』 須藤みか 著
上海ジャパニーズ 日本を飛び出した和僑24人 (講談社+α文庫)
- 作者: 須藤みか
- 出版社/メーカー: 講談社
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【所感】
・2007年の本。当時、企業派遣とかではなくて、自ら上海で就職活動や起業活動をしてきた日本人24人へのインタビュー本。表紙も、なんかかっこよさげ。
・海外旅行のお供に、海外モノっぽいということで、セレクトしたのだけど、なんか微妙な、というか、薄い内容で、残念。
・微妙とか薄いというのは、自分が知ってた、とか、想像していた、範囲のケースというかインタビューで、え!?という事例というか、人がいなかったから、かも。
・ま、法的に微妙なところで活躍してる人の話とか、上海の権力に近いところで活躍してる人の話とかは、当然、インタビューに出てこないので、無理だろうけど、そういったところが面白いかなー、とか。そういうキワドイ線は、小説に任せた方が、不幸が減って良いかもしれん。
・閉塞日本からみた一つのフロンティアという意味での、上海であれば、2000年前後に、ネット業界に飛び込んだ人たちのとの比較とか面白いかも。
・海外で稼ぐ、という面で言えば、他の国との比較でみると、面白そう。同じアジア内でも面白いかもしれん。
・あと、雇われもの、と、起業家を同じにくくるのも、また、これ微妙か。。。起業家縛りの方が、面白かった印象あり。
・要するに、インタビューの切り口が、自分にフィットしない、というか、緩いというか、切れ味が悪いということか。
・とはいえ、インタビューにでてくる上海で、頑張ってる人たち24人は、それぞれに素敵な印象。