『巨大投資銀行』   黒木亮 著

巨大投資銀行(上) (角川文庫)

巨大投資銀行(上) (角川文庫)

巨大投資銀行(下) (角川文庫)

巨大投資銀行(下) (角川文庫)


【所感】
・たぶん7年ぶりとかで、黒木作品。なかなか、読み応えのある長編。でも、読みやすい。
 
・1980年代から2000年すぎまでの金融業界が舞台。このあたりの時代の、特に日本の金融業界を知りたい人とか、お薦めな一冊。主人公が3人いて、M&A、PF、トレーディング、営業、と投資銀行のそれぞれの職種も分かれてて、バランスよく、業界の雰囲気が掴める感じ。(逆にバランスが良いので、深みはなくて、各職種の深さを求めるのは違うかも。)今の若い人で、金融業界に就職して、オヤジたちの昔話に付き合う機会が多い人とか、これ読むと、良いかも。
 
・今となっては、歴史な感じの バブル → バブル崩壊 → 金融ビッグバン → アジア通貨危機 → ジャパンプレミアム → 合従連合 といった金融業界の歴史が感じられて、懐かしい半分、えー、そーだったのー、という驚き半分。
 
投資銀行って、商社に似てるかな、商社の部署にもよるけど。商社がモノ寄りで農耕的、投資銀行が金とか金周りサービス寄りで狩猟的な感じか。個人が求められるスキルとか、個人の生活とか、似た感じ。
 
・ってーか、学生時代の就職活動の頃とか、周りの雰囲気は、民間に行くなら、銀行でしょー、(民間)銀行なら、興銀か三菱か、ちょっと変わった人は東京銀行だよねー、体育会ノリが好きなら住友もあり、という雰囲気だったけど、いまとなっては、全部、会社名が変わって、だし、本書を読むと、日本の金融機関のダメダメさ加減がよくわかったというか、護送船団方式の限界を超えてたというか、やっぱ、チャレンジとかトライアルが無い組織はダメになってくんだなー、と実感。
 
・1990年代後半に、南米の国のプラント案件の入札が取れて、制度金融のアレンジしてたら、契約直前に、邦銀が外貨の調達ができませんー、って言ってきて、スッタモンダの末、欧州系外銀から、高いアップフロントフィーを取られたけど、なんとか調達できた、のを思い出した。その頃は、まだ、天下の邦銀様が、なんでー?そんだけマーケットは大変なんだー、って思ってたけど、本書を読むと、至極当然というか、天下の邦銀様が、そもそも、チャチかったんだなー、って。そーいう意味では、興銀に就職した人が、ガンガン辞めてったのって、なんか、理解しやすいかも。
 
・とか思うと、興銀の同期会というのに遭遇したときに、転職組も大勢いて、今、給料いくら?とかで、びっくりするくらいの額を言ってたのに、あと2時間で電車動くから、粘ろうぜー、とか、飲み代を、10円単位で割り勘にしてたのも、思い出した。そんだけの金額を稼いでいるなら、タクシーで帰れよー、とか、誰か、全額を奢れとは言わないけど、1000円未満の金額くらい、大目に払え、とか、見てて思ったかも。