『マオ 誰も知らなかった毛沢東』   ユン・チアン ジョン・ハリディ 著

マオ―誰も知らなかった毛沢東 上

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マオ―誰も知らなかった毛沢東 下

マオ―誰も知らなかった毛沢東 下


【所感】
・2005年に日本語版が出た、毛沢東の伝記本。これはかなり凄い一冊。毛沢東の伝記なんだけど、中国の近現代史を理解するという意味で、凄い良いかも。世界史とかで中国の近現代を一気に理解したいなら、教科書よみつつ、これ読めば、OKっぽい。丁度、中国の近現代を一回、見てみたかったから、丁度よかった。かなりの長編なのだけど、あっという間。中身が衝撃的とか、そーいうのを知らなかったから、とか、翻訳が良いから、とか、そんな理由か。
 
・まず、ここに書いてあることが、フィクションだとしたら、それはそれで、想像力豊かで、でも、ホントっぽくて、凄い。でも、全部じゃなくても、ほとんど、事実なんだろーなー、と思う次第。
 
・日本で普通に生活してると、ここに書いてある毛沢東のイメージって、持ってないよね、ま、関心が無い・少ない、というのもあるし、入手できる情報も限られてるし。隣国なのに。日本側の問題か、中国側の操作が見事なのか。文化大革命とか、単語しかしらなかったけど、クリアーになった。中学のときの地理の教科書で、人民公社、すげー、的な記述があったけど、いまとなっては、そんなの教科書に書いて良かったのかね、全く。
 
・この前、世界の独裁者たち、というテレビやってたけど、確か、毛沢東は居なかったような。でも、これが本当なら、世界史上、ナンバー1とか2にあがる独裁者だったのね、毛沢東って。ヒットラーとかポル・ポトとかかわいいもんじゃん、毛沢東に比べたら。軍国主義時代の日本が暗黒という色で語られることが多いけど、毛沢東時代の中国に比べたら、可愛いもんだ。ある意味、日本も独裁に近い状態だったけど、まだ、愛があったというか、日本の独裁者たちは、(少なくとも本人たちは)滅私奉公的に日本のことを考えてたというか、私利私欲的な印象は少ない。
 
・共産圏って、独裁者の詭弁に使われてしまって、結局、独裁者圏ということだったのか。。。だとすると、共産圏・社会主義圏 vs 資本主義圏 と経済体制で語られることが多かったけど、実は、独裁者+奴隷国民圏 vs 民主主義 の戦いだったってことか。ま、政治体制と経済体制は表裏一体といえば、それまでだけど。。。
 
共産主義とか社会主義は、当時というか、ざっくり50年間くらい、特に若者とか貧しい人々に夢を与えた時代があったわけで、その理想を、着実に実践してみたリーダーとか国って、結局、無い?比較論で言えば、レーニンカストロゲバラキューバ?日本? だとしたら、完全なネット社会になれば、事実上かもしれないけど、もう一回、共産主義とか社会主義に近づいてくのかな。でも、まぁ、帝国主義以降の時代に、小国が国をなんとかしたいと思うと、資本の蓄積もないから、どうしても、国中の資本を集中的にある分野に投下していかないといけないから、どうしても、共産というか社会というか全体主義というか、そっちに寄らざるを得ないのもわかる。そこで、私利私欲とか独裁に流れるか否かが鍵なのか。
 
自民党独裁って、なんか可愛かったな。最初の10年はともかく、その後は、民間がガンガン稼いでくれたし、国民も若くて増えたし、アメリカのおかげで、安全も保障されてて、外交もあって無いようなもんだし。誰でも、政治というか国家運営できたんじゃん、みたいな。まずいことは、先延ばしにしてたし。そのツケがいまあるわけで、80年代あたりから生き残ってる政治家は、自分を見つめなおして、トットと退場するのが、自分にできる最善のことだと、はやく悟った方が良いと思う。
 
毛沢東時代の中国を知ってる外国人からみたら、たしかに、中国は、どうしても信用できないイメージを持っちゃうよね。
 
・もし、自分が毛沢東時代の中国人だったら、と思うと、かなり辛い。選択肢が無いというか、日本はダメなところもたくさんあるけど、この時代の日本で良かった、ホント。
 
『ベイジン』で、「中国は、ずっと希望が無くて、まだ微妙だけど、ようやく希望が見えてきた。」的な話があって、確かに、この毛沢東時代があって、その後、ざっくり30年くらい経って、この15年は、経済的にも大きく変わってきて、で、やっと、希望が見えてきた、っと。『ベイジン』だけだと、そーなんだー、という感想だったけど、本書を読んで、そりゃ、そーだよねー、という感想に変化。国全体が、PTSDだったというか。
 
・やっぱ、中国は、民主化するのか?その前に、法治化の徹底 とか、連邦国家化、か?他国の歴史とかを思うと、流れ的には、そーだよね。下準備とキッカケは何かな?
 
・と、なんか、かなりの衝撃をもって、あれやこれや、いろいろと考えさせられた一冊でした。