『サヨナライツカ』   辻仁成 著

サヨナライツカ (幻冬舎文庫)

サヨナライツカ (幻冬舎文庫)



【所感】
6年ぶりに再読。3時間くらい。一回読んでる内容なのに、何回も、震えたし、うるうるしてしまった。
・詩を書いたのが、嫁、って、ところが、またね。深い、というか、教養、というか、なんかニクい感じ。
・詩の意味、実は、結構、深いのかも。目的語と補語がないところに、何を入れるかで、同じ意味にもなるし、正反対の意味にもなる。別人だとすると、誰を愛したのか、誰に愛されたのか。愛してくれてるヒトを愛したのか、愛したヒトに愛されたのか。愛してくれていないヒトを愛したのか、愛していないヒトに愛されたのか。もしくは、同じ相手でコトが違うのか。6年前は、そこまで思わなかったなぁ。
・前に読んだあと、バンコクに行くことがあって、オリエンタルホテル、行ってみたら、入り口を入る前にドアマンがわざわざ自動ドアの外に出て寄ってきて、何の用事だ?って聞かれて、追い返されたのを思い出した。短パン、サンダル、キャップ、髭面だったからだけど、せめて、カフェでお茶くらいさせて欲しかった。アジア一のホテルなんだから。アジア一のホテルだから、断られたんだけど。今度、行く機会があったら、ちゃんとした格好でいって、カフェでお茶くらいはさせてもらう所存。
・作者が、結婚(再婚だっけ?)したのが、本作品の頃だとか。再婚だとしたら、なにか含みがあるのかも。入り口が、不倫だったのかな。深読みか。



【詩の引用】

   サヨナライツカ

   いつも人はサヨナラを用意して生きてなければならない

   孤独はもっとも裏切ることのない友人の一人だと思うほうがよい

   愛に怯える前に、傘を買っておく必要がある

   どんなに愛されても幸福を信じてはならない

   どんなに愛しても決して愛しすぎてはならない

   愛なんか季節のようなもの

   ただ巡って人生を彩りあきさせないだけのもの

   愛なんて口にした瞬間、消えてしまう氷のカケラ


   サヨナライツカ

   永遠の幸福なんてないように

   永遠の不幸もない

   いつかサヨナラがやってきて、いつかコンニチワがやってくる

   人間は死ぬとき、愛されたことを思い出すヒトと

   愛したことを思い出すヒトにわかれる


   私はきっと愛したことを思い出す