『イビサ』   村上龍 著

イビサ (講談社文庫)

イビサ (講談社文庫)


【所感】
・南の島に行くのに、なんとなく手にした一冊。文庫なんだけど、表紙が素敵。
 
・元は89年から91年の連載だそうな。バブルと村上龍の香りが濃い目で、懐かしい感じ。
 
イビサ島が主な舞台だと思ったら、そんな事なくて、残念。イビサ島が舞台だと思って、南の島向きだと勘違いしてしまった。かつ、内容も、南の島向きではなかったか。
 
・最初の方のシーンで、イメージとかを伝えるのに、映画の1シーンを引き合いに出して語るところがあるのだけど、映画の1シーンを引き合いに出すコミュニケーションって、さすがに、80年代までしか通用しない、気がした。刷り込みとして、マイナーなメジャー映画あたりを引き合いに出すのって、ちょっとカッコいいとか思ってたし、それで通じる部分も多々あったのだけど、こんだけ、コンテンツが溢れて、受け手の指向性も多様化してしまうと、通じない世の中になってしまったような。キョウビの若者は、そういったコミュニケーションするんだろうか。
 
・主人公が、徐々に、壊れていく、というか、自分になっていく、という話ではあるが、この壊れ方というか自分の取り戻し方ってのも、また、なんか、80年代っぽい。壊れて、自分になる、というのは、まー、昔からありそうだし、今でもありそうではあるけど、壊れ方とか、壊れる場所とか、壊れるアイテムとかがね。