『フューチャリスト宣言』   梅田望夫・茂木健一郎 著

フューチャリスト宣言 (ちくま新書)

フューチャリスト宣言 (ちくま新書)

【所感】
・2007年5月の本。「ウェブ進化論」「ウェブ人間論」に引き続き、梅田本3冊目。
 
・同じ対談本で、かつ内容も似たような話だけど、「ウェブ人間論」より、こっちのが、ダンゼン、好きかも。理由は、なんだろ?トーンとか、文体とか、流れとか、結論が、明るい、とか、楽天感が多い、とか、ノーテンキな感じ、からか。もしくは、対談者二人のネットに対する理解とか世の中の見え方のレベルが近くて、その前提の考え方とか事実関係といったところのすり合わせや説明が少なくて、話が、トットとその先へ行ってくれるから、か。
 
・なんか、こーいう絶対的な未来への期待、というか、楽天的な世界観、というか、基本的に誰にとっても素晴らしいものだと思うのだけど、それを中心にモノを考える人とか行動する人とか話をする人が少ない、ってのが、この本っていいよな、という気持ちの裏返しなんだ、っと。世界的にも、シリコンバレーだけがそれに突出していて、日本は逆の方向に顕著だと。まー、生きてくのって、やっぱ大変で、楽天的に未来に期待するってのは、エネルギーがいる、とか、経済基盤を個人に確立していて余裕がある人じゃないと難しい、ってことか。で、エネルギーがある人が世界中からシリコンバレーに集まってると。そういう意味では、ネット前の時代だったけど、シリコンバレーは、ある種の島宇宙だったのか。
 
・未来は、予測するものではなくて、創造するもの、良い言葉。インターネットのおかげで、この言葉を実践できるというか潜在的な実践者の数は、増えてきてるし。明治維新や二次大戦直後みたく、それ以前の体制とか権力がふっとぶ状況に、今、なったりしたら、一気に変わってくんだろうか。潜在的な実践者が増えた分、過渡期の混乱も大きいか。
 
・ネットの側に賭ける、不特定多数への信頼が満載というか、それを実感してるんだろーなぁ、きっと。この二人みたいな上の世代の人が身近に欲しかった、あっ、高田純次もありだ、と思うとともに、自分が、そういう大人になるには、2つくらい壁をぶちやぶらないといかん、と思うと、ちと辛い。
 
・高等教育について、ネットで、最先端の論文が無料で拾えて、最先端を走ってる人達とネットで繋がれる、から、今の日本の大学教育システムより、ずっと安価でずっと効率的に学ぶ方法ができてきた、というのがあって、これって、誰か、いまひとつ便利にまとめあげて欲しいところ。専門SNSでオープンなもので。論文読んだら、コメントかけたり。自分の論文アップできたり、初学者は、この分野なら、まずはこれを読めって、ガイドがあったり(もちろん、これも湯ユーザーがレコメンドする仕組みで)。ある程度使いこむと、その人の研究履歴というか、分野だったりレベルだったり、方向性だったり、研究経歴書、みたいな見え方もできて。まー、ブログとか検索とか、今あるツールでもできるんだけど、それをまとめて、便利に使える、というのが、希望。こういうのあったら、既存大学の先生によっては、ゼミとか研究室メンバーに、そのサイトの利用を義務づけたくなるような。
 
・この本、また、後日、読み返したいな。

 
【目次】

     第1章 黒船がやってきた!
            媒体を自分で持てる快感
            グーグルの画面は深い思想に基づいている
            ウィキペディアが日本から出なかったのはなぜか
            公共性と利他性がインターネットの特質
            ネットがセレンディピティを促進する
            ウェブは脳の報酬系を活性化させる
            シリコンバレーのルーツは反権威
            世界史の4つ目のリンゴ
            ヒューマン・ネイチャーを理解する
            アメリカの社会風土がそもそも2.0的
            リアルがかかわった途端にスピードが遅れる
            新しいものを賞賛する精神が社会にあるかないか
 
     第2章 クオリアとグーグル
            アメリカにいるときは弱者の視点
            ネットで情報を集めるのはアスリート的
            ユーチューブは確信犯
            最初から完璧さを求めない姿勢
            ポスト・グーグルは何なのか
            サーチとチョイス
            グーグルとクオリアは二つの別の世界
            コンテンツ側は消費されていく?
            ネットとの付き合い方がその人の個性
            ネット時代のリテラシーは感情の技術
 
     第3章 フューチャリスト同盟だ!
            大学で教えるエネルギーをブログにかけたい
            大学はもう終っている
            たった一人の狂気で世の中が動く
            何を志向できるかが勝負
            ダーウィンはインターネット時代の人に近い
            楽しくてしょうがないという人しか勝てない
            組織に所属するのでなくてアフィリエイトする
            そうか、「フューチャリスト同盟」だ!
 
     第4章 ネットの側に賭ける
            負け犬たち、一匹狼たちが幸せになれる
            ネットへのアクセスは基本的人権
            「怒り」が大事
            自らが補助線になるということ
            ロングテールの意味は「人間すべて違う」
            日本の外に開かれた偶有性に身をさらす
            実験は大事だ! 
            「本」とは錨をおろすポイント
            インターネットは「言語以来」
            「談合社会相対化」が共通ミッション
            無料とはFreeである
            過去の思想でいま起こっていることは語れない
            ネット以前・以後は「相転移
            生命原理に反することはうまくいかない
 
     梅田望夫特別授業 「もうひとつの地球」
            コンピュータとの出会い
            「もう一つの地球」とは
            世界の謎、オープンソース
            未来は予想するものではなくて創造するもの
            「好きなこと」を見つけて貫くこと
 
     茂木健一郎特別授業 「脳と仕事力」
            青春の一ページ
            ギャップイヤー
            創造性とコミュニケーション
            強化学習のメカニズム
            プロとは自分のやっていることに快楽を感じる人
            自己批評は大事だ
            弱点が最大のチャンス