『社会主義化するアメリカ 米中「G2」時代の幕開け』   春山昇華 著

社会主義化するアメリカ―米中「G2」時代の幕開け (宝島社新書 300)

社会主義化するアメリカ―米中「G2」時代の幕開け (宝島社新書 300)


【所感】
・著者の「サブプライム問題とは何か アメリカ帝国の終焉」「サブプライム後に何が起きているのか」に続く3作目。「金融大崩壊―「アメリカ金融帝国」の終焉 」を3冊にわけて、詳しく解説してくれてるといった内容という印象(細かく比較してないけど)。
 
・2009年10月の本。前2作が、それぞれ2007年・2008年の版なので、丁度1年置き。字も大きくて、読みやすい。こういう本、中学とか高校で、出会いたかった。
 
・ミソは、第6章か。資本主義と民主主義の相性、とか、矛盾って、考えたことがなかった。今まで、資本主義と民主主義がセットで当たり前な時代だったからなぁ。普通の日本のサラリーマンだと、資本主義世界の自分と、国民としての民主主義世界の自分が、共存していることになるのかぁ。
 
独裁制っていいね、緊急時とか、というよりも、民主主義って、民がそれなりの民度が無いと、弊害の方が多いのではないか、とも思う。民度が数字で測れると面白いのに。企業は民主主義ではないから、国家より先にグローバル化できた、とも言えるのか?企業は民主主義ではないから、国家より動きが良い、民度に関係なく指導者次第でより良き行動が取れる、とは言えるな。
 
・資本主義の実践者である企業のグローバル化に引っ張られて、国家のグローバル化が本格化する、という面では、既存の枠組みの変革には、外の力が必要というのは、ここでも同じか。次代を導くのは、アメリカが育てた他国ではなく、アメリカが育てた資本主義の申し子であるグローバル企業が、次代を引っ張るのかも、とも読める。
 
・企業のグローバル化によって、資本家は、国家への依存を減らすというか、資本家にとって、国家は不要になった、という事か?陰謀説っぽい見方だと、資本家にとって最高のビークルだったアメリカという国も、その賞味期限が終った、で、アメリカ覇権の間に、資本家はアメリカをして、国家を必要としない世の中を作らせ、資本家にとって国家というビークルを必要としない時代が到来した、みたいな言い方もできる?
 
・資本主義vs民主主義、グローバル企業vs国家、ここしばらく、ちょっと興味深いテーマだ。
 
・日本は、厳しいのね、やはり。次の覇権にも気にいられるといいのだけど、気にいってもらえる何か、は何になるのだろうか?



 
【目次】

   プロローグ
   第1章 オバマの出現
   第2章 金融危機は繰り返す
   第3章 アメリカ流資本主義とは何だったのか
   第4章 社会主義に舵を切ったアメリ
   第5章 米中融合 − G2時代の幕開け
 
   第6章 グローバル化がもたらしたもの
         資本主義と民主主義。”仮面夫婦”の終わり
         「民主主義」と「資本主義」の相性はよくない
         バラ撒き国家の通貨価値は下落する
         薄く広く掠め取るビジネスに弱い「民主主義」
         グローバル化する資本主義に後れをとった民主主義
         排出権取引グローバル化の欠点を補う試金石になるか
         企業だけではなく国もグローバル化する
         行く先は「世界政府」の設立か
         ユーロはグローバル政府実現の試金石
         政治家はツケを将来に回そうとする
         リーダー不在の欧州
         社会主義は「少数エリートが物事を決定する」システム
         新に定義される価値観、”人道主義
 
   第7章 先進国日本が進むべき道
         ガラパゴス・ジャパン
         生き延びようとする企業と「ハケン切り」
         非正規雇用という制度自体が悪いわけではない
         日本人だから日本に投資という「ホームバイアス」は消滅した
         老人天国ニッポン
         年金問題が巻き起こす世代間闘争
         年金制度は1970年代に破綻していた?
         グローバル格差社会、国と年金の”国際化”
         年金問題は「制度疲労」の象徴
         若者が政治に無関心なのは、政治が若者に無関心だから
         今、日本は先進国であり続けたいのかを問われている
         リーダーシップの差が選挙を左右した
         「小泉チルドレン」と「小沢チルドレン
         民主党の政策は小沢一郎の『日本改造計画
         日本は世界の先頭を走っている