『金融大崩壊 「アメリカ金融帝国」の終焉』   水野和夫 著

金融大崩壊 「アメリカ金融帝国」の終焉 (生活人新書)

金融大崩壊 「アメリカ金融帝国」の終焉 (生活人新書)

 

【所感】
リーマンショック直後の2008年11月に出された本。
 
・非常に読みやすく、説得力があって、素晴らしいー。サブプライムローンとかリーマンショックという事件だけでなく、そこに至る歴史・背景・構造・意図をわかりやすく、解説してくれてる一冊。これだけの内容を、新書で、って、すごいね、水野さん。朝生とかをはじめ、テレビで見る水野さんも、落ち着いたわかりやすい口調が好印象で、手にした一冊ではあったのだけど、いやはや、これは読んで良かった。
 
・「アメリカ金融帝国」という仕組みを考えた人はすごいね。考えられた仕組みを実行させた権力者もすごいけど。水野さんは、偶然とか必要の産物的な書き方をしているけど、きっと、こういった事を見通して仕組みを考えた人とか集団がいたんだろーなぁ、と思う、期待する次第。とか思うと、アメリカという国自体が、そもそも、こういった仕組み作りのためのビークルとして建国されたんじゃねーか、とか勘ぐってしまう。
 
・そっちを主語に考えると、「大きな物語」では主人公っぽかった”国家”が、「アメリカ金融帝国」終焉後の世界では、明確に脇役化するのかもしれん。”国家”がその役割を終えるというか、変えるというか、縮小するというか。グローバリゼーションだし。国家間の戦争も無くなってきたし。とか思ったら、あとがきで、水野さんも書いてるや。
 
・第6章 日本経済の生きる道はどこか は、5章までの切れ味と比べると、ちょっと物足りない感あり。至極まともで、説得力もあるのだけど、短期的というか、目先というか。5章までが鋭すぎたのか、日本が生きる道が無い、と考えているからか、さすがの水野さんも次の世界は見通せないのか、紙面が少ないからか、ちょっと残念。

  
【目次】

     第1章 アメリカ発 世界金融危機
     第2章 危機の源泉、サブプライムローン問題とは何か
     第3章 「アメリカ金融帝国」はなぜ生まれたのか
     第4章 世界は不況からいつ脱出できるのか
     第5章 「アメリカ金融帝国」終焉後の世界
     第6章 日本経済の生きる道はどこか

     第3章 「アメリカ金融帝国」はなぜ生まれたのか
           それは1968年から始まる
           「大きな物語」の終焉
           上がらなくなった企業の利潤率
           新自由主義の台頭
           IT革命と時価会計システム
           覆った「経済の常識」
           その時、日本は
           「大きな物語」の最大の成功例 − 日本
           21世紀の利子率革命
           日本の「オウンゴール
           ありえた成長のシナリオ
           アメリカはいつ気付いたのか
           「金融帝国」の完成

     第4章 世界は不況からいつ脱出できるのか
           金融から自動車ビッグスリー
           不良債権が確定しない
           いつ下げ止まるのか
           不良債権の発生規模
           アメリカ国民の生活
           5年分の需要を先取り
           バブルもグローバル化する

     第5章 「アメリカ金融帝国」終焉後の世界
           「投資銀行」モデルの限界
           実体経済を振り回す
           ドル基軸体制の終わり
           主役の座を降りるアメリ
           「G7の終わり」の始まり
           「金融」の変化
           「無極化」の世界
           資本はどこへ向かうのか

     第6章 日本経済の生きる道はどこか
           日本輸出株式会社
           日経平均株価、大幅下落の背景
           日本の危機管理能力は
           26年ぶり安値の意味
           新自由主義への”NO”
           「就職氷河期」は再来するか
           円高の影響
           ターゲットは新興国中産階級
           必要な中小企業対策とは
           財政支出はもう効かない
           賃金はどうなる
           二極化とセーフティーネット
           本当のグローバル化