『虚構の城』   高杉良 著

新装版 虚構の城 (講談社文庫)

新装版 虚構の城 (講談社文庫)

 
【所感】
・1975年に出された高杉氏のデビュー作。
・舞台は、1970年代の石油会社。団塊の世代が20代くらいの頃か。最近のビジネス小説に比べると、ビジネスは少なめで、その環境下での、会社生活とか恋愛・結婚とか転職とか、そーいったお話といった趣き。
・個人的には、石油業界が云々とかビジネスが云々というよりも、40年〜50年くらい前の日本の労働環境というか会社文化というか時代というか、そーいうのが、登場人物の言葉使いに始まり、嗜好や優先順位のつけかた、とか、ある意味、時代劇を見るようで興味深かった。団塊の人たちって、こーいう環境や時代に、20代を過ごしたんだなぁ、って。そういうことを知りたい時に読むと良い一冊。
・1970年だと、戦争が終わって25年、2010年から25年前だと、1985年で、プラザ合意からバブルの時代。今の人たちがバブルを偲ぶ時間感覚が、1970年に終戦を偲ぶ時間感覚に似てるという事かぁ。
・現在からみると、戦後日本って、ほんと、自由とか市場とかが無かったんだなぁ、って思うのだけど、戦時中から見ると、それでも、自由で市場だったわけで、この見え方の違いって、大きいよなぁ。一方で、シガラミというか閉塞感というか、枠に依存したコミュニケーションというか、そーいうのって、変わって無いなぁ、とも思った次第。