『リスクに挑む 市場経済で生き残る攻撃的財務論』   福間年勝 著

リスクに挑む―市場経済で生き残る攻撃的財務論

リスクに挑む―市場経済で生き残る攻撃的財務論


【所感】
三井物産のCFOだった著者が書いた、財務リスクマネジメントの本。もしくは、商社金融を通してみた日本経済の本、といった感じ。キーワードとしては、市場経済、リスクとかか。
 
・総じて、字が大きくて読みやすく、理屈も、わかりやすくて、素敵。さっくり3時間くらいで読了。
 
・第2章で、ニクソンショック以降、時系列に、物産がというか著者がとってきた財務施策について回顧録があって、日本経済がいかに規制の中にあったか、その後の規制撤廃の混乱が大きかったか、市場経済といってもここ最近の話なんだね、とか、商社の本質は金融業、とか、あれこれ感じいってしまった。この章は、小説仕立てとか日記形式の方が、面白かったかもしれん。
 
・リスクマネジメント体制の構築とか、最初にやるとき、営業現場とか、リスクを過度にとってそれがタマタマ上手く当たって上がってきた役員とかに反対されそうだけど、そのあたりの障害をどうやって乗り越えたのか、とか、聞いてみたいところ。本書には、そういったプロセスについては、書かれていない、という点で、最近の経営系の本とは、ちょいと毛色が違う。
 
・財務的に国際化している会社やそれを目指している会社の、社長をはじめとしたトップマネジメントの方々、財務部員とかリスクマネジメント部員とかの現場の方々、とか、が読むと良いんだろーなぁ、という感想。第2部とかは、日本経済を勉強している学生が、時の臨場感や現場感を感じたいときに、向いてるかも。
 



【目次】

     第1部 リスクを読む
           第1章 市場経済とリスク
           第2章 リスクと経営
           第3章 リスクとグローバル・スタンダード

     第2部 リスクと戦う
           第4章 「円とドル」市場経済時代の幕開け
           第5章 バブルの時代 − 日本経済の暴走
           第6章 リスク管理から危機管理へ

     第3部 リスクに挑む
           第7章 マーケットで勝ち残るために
           第8章 自己規律に基づく創造的経営のために

     第3部 リスクに挑む
           第7章 マーケットで勝ち残るために
                  相場はトレンド、テクニカル、スーパーハイウェイ
                  相場のトレンドにさからわない − 利益は大きく損失は小さく
                  動く前に「予想利益」と「予想損失」を厳密に比較する
                  資金運用には人間の神経が耐えられる限界がある
                  予想困難な材料や自分に自信がないときは参戦しない
                  相場は相場に聞け − 自分の相場観にこだわらない
                  相場の大局観を持つためにチャートを使う
                  「追い証」は、自分の相場観に対する黄信号
                  素直なポジションを持つ − 二つの方向に賭けない
                  細かく利食いする − 強気に走ると時機を失する
                  商品、為替、金利・債権、株式など総合的に相場を見る
                  マーケットで生き残る人間の条件
                     1 勉強
                     2 勉強
                     3 勉強
                     4 大胆さと臆病さ
                     5 自己抑制力
                     6 幸運
                     補 プライドの高い人間には向かない
 
           第8章 自己規律に基づく創造的経営のために
                  失敗こそ最良・最善の教科書
                  損を切る勇気を持つ − 損を抱えると希望的観測に走る
                  絶えずシナリオを持つ。そして絶えず修正する
                  歴史に学び、歴史にこだわらない
                  いつも一人称で考える − 他人事で考えない
                  考えたら、行動する − 行動することで見える世界がある
                  内向きの経営が会社を滅ぼす − コーポレートガバナンス
                  規律を守る社風をつくる − コンプライアンス
                  ディスクロージャーこそ最強のリスク管理
                  自己規律に基づく創造的経営を目指す