『ターゲット・メディア主義 − 雑誌礼賛』   吉良俊彦 著

ターゲット・メディア主義―雑誌礼讃

ターゲット・メディア主義―雑誌礼讃



【所感】
・誰だか忘れたけど、どっかのブログで推薦されてて、気になってたテーマでもあったので、購入。
 
・広告代理店出身の人が書く本って、読みやすい印象。
 
・2006年の本なんで、ネット周りへの言及もあるのだけど、なんか、分析の切り口とか見方が、昭和っぽいなぁ、と思ったら、著者は、結構、大人の方だった。かつ、出版社も、宣伝会議だったので、妙に納得。基本的には、ライフスタイル誌が議論の中心。コミック誌とか専門誌とかではない。いわゆる週刊誌もちょろっとだけ。
 
・文章が、偉そうなのと、タイトル通り、雑誌礼賛(特に、ライフスタイル誌)な内容なので、ちょっと業界向けの営業本か?とか勘ぐってみたりした。
 
・昭和時代の雑誌メディアの歴史書として捉えると、かなり秀逸かつオールインワンな一冊。雑誌業界や雑誌メディアの歴史的事実と当時業界人がどういう風に業界や消費者を見ていたか、について、非常によくまとまってて、嬉しい。特に、雑誌マップは、綺麗で見やすくて、面白かった。便利そうでもある。
 
・一方、その見方とか分析軸について、今後とか将来とか、ま、今も、その軸だけで、モノを見てていいのか?という不満というか、不安な印象。そもそも、見方が昭和っぽいので、個人的に、スゲぇー、とか、やられたぁー、とか、斬新+納得感からくる感動は無い。逆に、昭和型の切り方なので、昭和頭の人とかは、わかりやすい一冊だと思う。もしくは、昭和メガネで、雑誌とかメディアを見るとどう見えるのか、を見てみたい人に、最適という印象。
 
・分析については、世代論一本というか、過去の雑誌について世代論で切るのは、わかりやすいし、それで通用したから良かったのだけど、なんで、世代論が通用したのか、というところが、弱いというか、なので、雑誌の未来を考える段階で、この考え方では対応できないんじゃないかなぁ。
 
・できれば、メディアを流通とコンテンツで別けて考えて欲しかった。昭和型の基本としては、流通ありきなのだけど、流通がこんだけ群雄割拠魑魅魍魎状態で、これからどうなるかわからない昨今、コンテンツとか消費者でみていかないと、見えてこないと思う次第。その上で、嗜好の多様化とか人口構成とか経済力とかの消費者側の話とか、クリエイターというか編集者というかコンテンツ側の話が欲しかった。
 
・そもそも、雑誌って、何なのか?なぜ、消費者は、雑誌を読むのか?雑誌を買うのか?っところを、ちゃんと考えて無い感じするんだよなぁ、この時代の人達って。特に、ライフスタイル誌とか。なんで、ライフスタイル誌が受け入れられたのか、消費者は、なぜライフスタイル誌を求めたのか、とか。まー、そんなことを考えなくても、雑誌が売れる時代だったから、当たり前なんだけど。




【目次】

     第1章 雑誌はターゲット・メディアのトップランナー
     第2章 報道0円・情報0円の時代に起きた、雑誌をめぐるバトル
     第3章 雑誌創刊のカギをにぎるリーダーシップ・ターゲット
     第4章 連綿と受け継がれてきたDNAで見る、主要出版社の雑誌変遷
     第5章 雑誌マップで見わたす、男性誌女性誌の根本的な違い
     第6章 雑誌の歴史上、知っておきたい流れと動き
     第7章 ティーン誌から始まった、雑誌の構造改革
     第8章 改革はサラリーマン社会の裏側で起こっている

     第5章 雑誌マップで見わたす、男性誌女性誌の根本的な違い
            究極の3大願望(美・若さ・文化)を果たすため、旬を生きる女たち
            美・若さ・文化が支える女性誌は、男性誌よりパワフル
            平日と休日、ONとOFFで成り立つ男の人生
            『POPEYE』を読んで新しい世界を知った、ポパイ少年
            昔の『POPEYE』『Hot−Dog PRESS』がいまはないワケ
            旬に頼らないワンテーマ・マガジン『FRaU』『CREA』のつくり方
            自社のマルチな女性誌にのみ込まれないために
            結婚を機に、”Y字型”に分かれる女性誌
            ノーメイクのわたしと、メイクアップしたわたし
            ”逆L字型”でパッとしない、停滞ぎみの男性誌
            ”コの字型”のOFFタイム以外、ずっとONのサラリーマン

     第6章 雑誌の歴史上、知っておきたい流れと動き
            雑誌マップの骨組みを形づくったリーダーシップ・ターゲット
            リーダーシップ・ターゲットの誕生以前に隆盛を誇った4大婦人誌と3大ミセス誌
            美・文化・ファッションはおまかせ! 3大ミセス誌を生んだ出版社
            理想像を描くより、役立つ情報満載の『オレンジページ
            現代版・良妻賢母を応援する”すて奥””おは奥”
            女性ファッション誌の活性化、きっかけは男女雇用機会均等法
            40〜50代に到達した新世代が読みたい女性誌とは?
            専門誌から一般誌へ、ステップアップに成功した『ENGINE』『NAVI』
            ビューティー誌がファッション誌から独立した事情
            伝えたいのは商品か、それとも企業イメージか
            大手3社が参戦する、強くておしゃれなビューティ誌

     第7章 ティーン誌から始まった、雑誌の構造改革
            ローティーンとハイティーン、2段階におけるファッション志向の分化
            中学生のおしゃれ願望に火をつけた『nicola』
            W字現象の源は、『Cawaii!』と『CUTiE』のブレイク
            『CanCam』大成功の秘密
            おしゃれな母親の娘は、輪をかけておしゃれな女性
            雑誌を読む読者、洋服を買う消費者が、時代をつくる
            みんなと同じ格好をして安心するのは、ファッションじゃない
            ティーンが参考にするのは、雑誌&友達からの情報
            おしゃれ大好き! 男のおしゃれはヘアメイクから
            ヤングファッション誌というカテゴリーの限界
            『Boon』から始まった、ヤングファッション誌の進化
            年齢よりセンスと感性を意識した『HUgE』

     第8章 改革はサラリーマン社会の裏側で起こっている
            若者に負けるな! 『LEON』が起こしたオヤジ改革
            レオンな男、ブリオな男、モテる男もいろいろ
            おしゃれに対する欲求が男性誌の構造を変える
            画一的生活から脱却をはかる、新生サラリーマン
            ビジネスコンシャスでよきパパ、地球を守る自立型の男
            『OCEANS』に続け! 新ゾーンはチャンスの領域
            進化は『Oggi』から始まった − カッコよく働く女性たち
            ターゲット・メディアは伸びゆく”個”を応援する
            サラリーマン社会の入り口になった『DIME』『日経TRENDY』
            完全2分化体制のもと淘汰された、旧『POPEYE』と『HDP』
            「今のままでいいのか」世に問う、マガジンハウスのDNA
            ”モテるオヤジ”を具現化した、画期的な男性誌『LEON』
            レオン旋風を、ブームで終らせないために
            ”1週間”を繰り返す女と”旬”のある男、男女は逆転する?
            創刊ラッシュでも足りない、新生サラリーマン・マガジン
            男性誌の未来とターゲット・メディアの未来