『官僚とメディア』   魚住昭 著


【所感】
・直接的にネット業界がテーマではないけど、メディアという括りで、広義で、このカテゴリーに入れてみた。
 
耐震偽造事件とか、ライブドア事件とかの事件に関する詳細な取材を元にした、メディアが官僚に利用されている弊害のレポート。
 
・印象としては、「沖縄ノート」に似てる。著者の怒りみたいなところとか、絶対にゆるがなそうな主張というか。でも、なんというか、で、どうする?とか、で、どうしたら良くなるの?みたいなところが弱いというか、無いので、物足りない感。まー、オヤジが文句言ってるよー、みたいな感じか。ただ、その文句が、裏づけとか証拠とかをそろえてるので、立派な文句ではあるのだけど、良い歳なんだから、文句だけで終るなよー、とも思う次第。
 
・で、ふと思ったのが、テレビのニュースとか見てても、同じ感想なのを思い出した。そういう意味では、立派な文句が、マスコミの仕事と、マスコミの方々は考えてるのかも、とも思った。くだらない文句が多い世の中で、裏づけのある立派な文句を言う俺達マスコミ、凄くねぇ?的な。会社とかで働いてると、トラブルが起きて、そのトラブルの状況把握に加えて、で、どうする、を常に求められたりするから、なんか、マスコミって、とか思ってしまった。
 
・倫理的だったり法律的だったり道義的だったり、まー、良く無い事件に対して、経緯であったり当事者の意図や行動であったりは、事細かに調べるんだけど、そういった事件が発生する構造的な問題点の解読が浅い感じかな。官僚が悪いとか、退職がない官僚制が悪いとか。そこが浅いから、で、どうする?ってところには、行けないんだろーなぁ。
 
・そういう意味では、田原さんは、珍しいタイプだ。いつも、で、どうする?どうしたら良い?って言うもんなぁ。マスコミ人とかジャーナリストの、姿勢として。
 
・とか思うと、これって、世代的な姿勢もあるように思う。団塊から団塊ジュニアくらいにかけてって、立派な文句言うのが得意というか尊ばれてて、というか、で、どうする?ってのが、弱いというか、それは自分の考えることではない、というのが一般化されてるような。言ってみれば、今の日本の構造的な課題も、課題自体の指摘は、昔からあったけど、その対策を考えるのは俺の仕事ではない、って、皆が思ってて、たらいまわしにされて、今に至ってしまったような。
 
・まー、世代で言うと、そういった戦後世代を育てた戦前・戦中世代に非の始まりがあるのかもしれん。考えることは、俺らがやるから、お前らは、兵隊として文句言わず言われたとおりに動けー!的な。
 
・ついでに飛躍しておくと、日本の社会って、鉄筋コンクリートっぽいんだよなー。アメリカとか、五重塔っぽい。社会構造の変革が可能となる仕組みがビルトインされてる国家とか思想というか。ダーウィンの研究成果を、もっと社会に埋め込んでいかないと、日本文明が滅びるんじゃね?
 



【目次】

   第 1章 もみ消されたスキャンダル
   第 2章 組織メディアの内実
   第 3章 悪のトライアングル
   第 4章 官僚たちの思惑
   第 5章 情報幕僚
   第 6章 検察の暴走
   第 7章 NHKと朝日新聞
   第 8章 最高裁が手を染めた「27億円の癒着」
   あとがき 「メディアは誰のものか」