『夢は荒れ地を』   船戸与一 著

夢は荒れ地を (文春文庫)

夢は荒れ地を (文春文庫)


【所感】
・舞台は、国連介入後のカンボジア。だから、90年代後半くらい。援助バブルの最中。どこまでが事実(もしくは事実に近い)か、どこからがフィクションかは不明だけど、舞台設定は、事実に近いのかと、勝手に理解。
 
「流沙の塔」と似た読後感。中国とカンボジアとの違いはあれど、主人公を通して感じるのは、驚き、怒り、オカシイ、やり切れない、日本って凄いな、とかそんな感じか。日本も微妙ではあるが、長期的には民主化とか民主主義の成熟化が必要なのだろうか。その前段として、識字率向上に始まる教育の話と情報公開や透明化といったメディアの話。

・地雷除去が利権化してる、ってのと、クメール・ルージュの虐殺が報道されてる数より少ないかもしれない、ってのは、驚いた。特に前者は、事実なら、ほんとにやり切れない。日本のニュースでは見ない話だったし。日本のどっかの建機メーカーがブルドーザーの凄い奴みたいな乗車型地雷除去車のCMをやってたけど、あーいうのも利権化しちゃってる話なのか。
  
・日本って凄いな、といのは、調べたことないけど、死亡の理由が老衰じゃないけど、純粋な病死が多くて、殺害されるとかそういうのは、少ないような印象。普段生きてて、死を感じる状況が、当時の中国とか当時のカンボジアとかよりも、非常に少ないという理解。自殺者は多いけど、殺害されてというのは少ないのでは。
 
・最近、「流沙の塔」で中国、「夢は荒れ地を」でカンボジアを、船戸さんのガイドで旅行してきた気分。テレビで見た景色や、以前に中国で見た景色やタイやフィリピンやバリで見た景色を思い浮かべながら。



【関連リンク】
Wikipedia カンボジア