『流沙の塔』   船戸与一 著

流沙の塔〈上〉 (新潮文庫)

流沙の塔〈上〉 (新潮文庫)

流沙の塔〈下〉 (新潮文庫)

流沙の塔〈下〉 (新潮文庫)


【所感】
・舞台設定は、97年7月の香港返還直後の中国。サスペンス物ではあるが、改革開放路線での混乱が鮮明化してきている様が、民族問題や地域格差問題を中心に設定されている。事件自体はフィクションだけど、そういった設定は、多かれ少なかれ実態に近いのだろうなぁ、っと。10年以上前から、顕在化していた諸問題が、この10年の経済発展で誤魔化せてというか爆発していないのが驚き。
 
・中国のこういった面を見ると、日本は平和というか、マシだとも思った。少なくとも、普通に生活してて、死を意識する、意識させられる、意識せざるを得ない場面って、まず無いし。
 
・中国のシルクロードの方、行きたくなった。

・しかし、煙草を吸うシーンが多かった。常に誰かが煙草を吸ってる。中国って、煙草天国なのか。とはいえ、ちょっと前の日本もそうだったか。国内線の飛行機のシーンで煙草を吸ってたのは驚いた。思い出せば、日本も10年くらい前までは国際線に喫煙席があったような気もする。
 
・小説なんだけど、話半分の歴史として、現代史扱い。歴史を感じるのに、小説って、やっぱ便利。中学とか高校のときに、それぞれの時代を感じられる推薦小説、先生から紹介されてれば、もっと早くその便利さに気付けたのに、残念。