『謎とき日本近現代史』   野島博之 著

謎とき日本近現代史 (講談社現代新書)

謎とき日本近現代史 (講談社現代新書)


【所感】
・3時間くらいで読破。いやはや、これは素敵。大学受験のときに読んでれば、良かった。

・まずは、問いの立て方が良い感じ。聞かれて、自分も、答え、何だっけ?というようなところだけど、マイナーな論点では決してなくて、というバランス感。大学入試でも出そうな問題とも言えるか。敢えて文句を言うなれば、今の自分の興味からすると、問いが小さいというか細かいか。

・もちろん、説明も良し。日本史の授業では、あんまり言及のない外部環境の説明がちゃんとあって、見事。特に近現代史では、そこに制限されるというか規定される部分が大きいだけに。いわゆる居酒屋での酔っ払いオヤジの日本人論や日本論って、外部環境の教えが少ない歴史教育にその原因が大きいような気がする。

・と思ったら、著者は、予備校の日本史講師だった。きっと、売れっ子なんだろうな。



【目次】

   第1の問い 日本はなぜ植民地にならなかったか
   第2の問い 武士はなぜみずからの特権を放棄したか
   第3の問い 明治憲法下の内閣はなぜ短命だったか
   第4の問い 戦前の政党はなぜ急成長し転落したか
   第5の問い 日本はなぜワシントン体制をうけいれたか
   第6の問い 井上財政はなぜ「失敗」したか
   第7の問い 関東軍はなぜ暴走したか
   第8の問い 天皇はなぜ戦犯にならなかったか
   第9の問い 高度経済成長はなぜ持続したか

第1の問い 日本はなぜ植民地にならなかったか
暗黙の前提・アプローチの方法・官僚制の確立・帝国イギリス・イギリスの判断・国際環境の激変・1890年代の場合・日本近海の海峡・英仏連合艦隊とロシア艦隊・シーレーンと日本・日本のもっていた条件

第2の問い 武士はなぜみずからの特権を放棄したか
新旧交代の代価・貴族制と武士・不要となる武士身分・武士が支えた政権・近世の武士・武士の戦争と近代の戦争・均質な戦闘者・武士の発生・武士のもつ責任感・再出発した武士・民権派の行動・民権派の認識

第3の問い 明治憲法下の内閣はなぜ短命だったか
短命な内閣・分析の視点・首相の権限・閣内不一致の危機・閣内不一致の例・天皇大権と「宮中・府中の別」・バラバラになる可能性・内閣の性格・非政党系内閣と衆議院・政党内閣への攻撃・首相の選定・元老の希望と現実の政治情勢

第4の問い 戦前の政党はなぜ急成長し転落したか
帝国議会の発足・急成長の証明・転落の証明・民権運動に対する先入観・藩閥勢力と民権運動・帝国議会の「協賛」権・帝国議会の権限・成長を支えた力とその限界・政党への追い風・吉野の構想・天皇機関説の内容・天皇機関説の役割・男子普選の実現・衆議院の重み・政党の人材補給・政党の実力・弱体政権の継続・政党への不信・国体明徴声明・国家総動員法・国際環境の激変・政党も国民も

第5の問い 日本はなぜワシントン体制をうけいれたか
ワシントン会議・ワシントン体制・日本の選択肢・世界のムード・民族自決・大国間の力関係・日本経済の苦境・アメリカの繁栄・日本を支えるアメリカ・現状維持の意味・最善の選択

第6の問い 井上財政はなぜ「失敗」したか
井上財政の「失敗」・長期不況と救済融資・金融恐慌・苦しい対応・井上準之助の登場・金本位制の内容・自動調節作用・第1次大戦と金輸出禁止措置・井上の考えたこと・昭和恐慌・折れた翼・新平価解禁論・ドル買い問題・井上財政の評価

第7の問い 関東軍はなぜ暴走したか
満州事変の勃発・関東軍の性格・ソ連の変貌・北からの圧力・中国情勢の転回・中国の攻勢・日本のディレンマ・社会不安と人口爆発アメリカの後退・石原莞爾の個性・別の選択肢

第8の問い 天皇はなぜ戦犯にならなかったか
ポツダム宣言の受諾・明治憲法の条文・東京裁判・矛盾する天皇の姿・沈黙を破る天皇・いわゆる「聖断」・免責の論理その1・アメリカ政府の態度・マッカーサー電報・免責の論理その2・電報の表現・稀有な人生

第9の問い 高度経済成長はなぜ持続したか
高度経済成長・占領改革の成果・めぐまれた国際情勢・特需景気・ブレトンウッズ体制・技術教育資金・二つの革命・政府の方策・実質的な円安効果・変動相場制への以降・第1次石油危機