『日本のブルー・オーシャン戦略 10年続く優位性を築く』   安部義彦・池上重輔 著

日本のブルー・オーシャン戦略 10年続く優位性を築く

日本のブルー・オーシャン戦略 10年続く優位性を築く


【所感】
・6時間くらい。
「イノベーションと企業家精神」に引き続き、「ブルー・オーシャン戦略」を読み返そうと思ってたら、手元になくて、購入しようと思ったら、目にした一冊。
・待望の、欧米理論 + 日本版ケース という構成。この構成で他の経営理論本、もっと出ればいいのに。
・8章の実行の部分は、経営改革系の本が詳しい感じっか。ブルー・オーシャン戦略の採用=レッド・オーシャン型の業務改革が必要、ということが重要で、その具体的な手法について、軽く触れてるといった感じか。
・確かに、本家「ブルー・オーシャン戦略」よりも、わかりやすい。理由は、次のようなところ。本家との関係性をざっくり言ってしまうと、「イノベーションへの解」「イノベーションへの解 実践編」みたいな感じ。
    1.翻訳じゃなくて、そもそも日本人が書いてるから。
    2.事例が日本企業を中心に日本人にも馴染みの深い企業だから。
    3.内容が、コンセプトや理論だけの本ではなく、活用をイメージした具体的なものだから。
       (具体的な理解促進策の一つとして、レッド・オーシャン戦略との比較が随所にある。)



【ブルー・オーシャン戦略の位置づけ】
ドラッカー氏のイノベーション論の中での位置づけ → 中野氏曰くドラッカー氏の顧客創造戦略の価値戦略がそれにあたる、ブルー・オーシャン戦略は(ドラッカー氏の言う)イノベーション創造を目指している、と。
クリステンセン氏の破壊的イノベーション理論の中での位置づけ → 破壊的イノベーション論の”無消費”(含過剰満足)=ブルー・オーシャン戦略の”ノン・カスタマー”。なので、破壊的イノベーションを検討する場合に、ブルー・オーシャン戦略のフレームワークが有効であるが、ブルー・オーシャン戦略は、破壊的であるか否かは、特に求めていない。
・ポーター氏の「差別化戦略」との違い → 既存顧客や既存の業界構造に注目し、既存市場での競争に打ち勝つことを目的として、低コスト戦略と差別化戦略トレードオフの関係とするポーター氏の戦略論に対し、ブルー・オーシャン戦略では、それまでは存在しない市場や業界のノン・カスタマーに注目し、低コストと差別化を同時に達成する(場合が多い)、というあたりが大きな違いか。
・結局のところ、次のような理解。「ノン・カスタマー(満足過剰も含む)向け新サービス・新事業の開発、もしくは、新しいマーケティング軸(セグメンテーション)を求めるフレームワーク」。既存市場を対象とするポーター氏やコトラー氏の理論は、ブルー・オーシャンには”適応できない”、といった表現が4章とかで出てくるのだけど、だからといって、ポーター氏やコトラー氏の理論を知らなくて、本書だけで、ブルー・オーシャンに対応できるか、というと、そうでは無いとと思う次第。



【日本での事例・ケース】
   任天堂 Wii             カーブス 女性専用簡易スポーツクラブ
   ソニー ウォークマン          NTTドコモ iモード(パス1)
   明光義塾(パス2)           ネスレ ペットフード(パス3)
   任天堂 ファミコン(パス4)      QBハウス 低価格カットハウス(パス5)
   ユニクロ (パス5)          NOVA(パス5)
   セコム(パス6)            シマノ(パス6)
   アドバンテッジパートナーズ(パス6)  アスクル
   テイクアンドギヴ・ニーズ        皇居マラソンランナーと近くの銭湯
   インターネット・オークション      T型フォード
   IHクッキングヒーター         コマツ KOMTRAX
   インダス



【目次】

   第1部 ブルー・オーシャン戦略の成功事例
       第1章 ブルー・オーシャン戦略を体現する製品 − 任天堂Wii


   第2部 ブルー・オーシャン戦略の概要
       第2章 新しい需要を創造することが、ブルー・オーシャン戦略の目的
       第3章 ブルー・オーシャン戦略における3つの主要素と全体像
       第4章 ブルー・オーシャン戦略の比較対象としてのレッド・オーシャン(競争)戦略
       第5章 バリュー・イノベーションとブルー・オーシャンの基本ツール


   第3部 ブルー・オーシャン戦略の活用
       第6章 ブルー・オーシャン戦略のプロセス(戦略をビジュアル化する4つのプロセス)
       第7章 正しい順序で戦略を考え利益を上げる(プロセス3.5)
       第8章 ブルー・オーシャン戦略の実行


   第4部 よるある質問とその回答
       第9章 活用のためのQ&A

   第2部 ブルー・オーシャン戦略の概要

       第2章 新しい需要を創造することが、ブルー・オーシャン戦略の目的
             ブルー・オーシャン戦略の特徴は、次の3点にある。
               1 「新しい需要の創造」にフォーカスする
               2 ストラテジック・ムーブ(一連の経営判断・施策のセット)を分析単位とする
               3 戦略作りの方法論だけでなく実行論まで包括している
             本章では、1と2の意味について説明する。

       第3章 ブルー・オーシャン戦略における3つの主要素と全体像
             1 バリュー・イノベーション
             2 ティッピング・ポイント・リーダーシップ
             3 フェア・プロセス

       第5章 バリュー・イノベーションとブルー・オーシャンの基本ツール
             買い手にとっての「バリュー」を正しく理解する
             戦略で「バリュー」を高めるバリュー・イノベーション
             バリュー・イノベーションの基本ツールを使いこなす
               戦略キャンパスとバリュー・カーブ
               フォー・アクション・フレームワーク(ERRCグリッド)
               ブルー・オーシャンを創造するバリュー・カーブの特徴
                 1 資源のフォーカスが明確である
                 2 差異の明確な独自性がある
                 3 極めの一言で市場に訴えかけられる
             バリュー・カーブの見方
                 1 ブルー・オーシャン戦略適合度
                 2 レッド・オーシャン度
                 3 利益に繋がらない全方位過剰奉仕
                 4 一貫性のない戦略
                 5 意識が内向き

   第3部 ブルー・オーシャン戦略の活用

       第6章 ブルー・オーシャン戦略のプロセス(戦略をビジュアル化する4つのプロセス)
             1 覚醒 戦略キャンパスで現状を確認する
             2 現地探索 新市場の方向性を見つけ出す
                 市場の境界を引き直す6つのパス
                 普通のビジネスパーソンのための6つのパス
                   パス1 オルタナティブを広く見渡す
                   パス2 業界内の他の戦略グループに学ぶ
                   パス3 チェーン・オブ・バイヤーズに目を向ける
                   パス4 併用される補完財や補完サービスを見渡す
                   パス5 機能と感性のどちらで顧客にアピールするかを切り替える
                   パス6 将来を見渡す
                 ノン・カスタマーの3つのグループに目を向ける
                   第1層(Soon to be)
                   第2層(Refusing)
                   第3層(Unexplored)
                 戦略キャンパスを確認する3つのチェックポイント
                   Forcus・Divergece・Compelling Tagline
             3 戦略の見本市 あるべき戦略案を検証する
             4 コミュニケーション 新しい戦略を社内に浸透させる 

       第7章 正しい順序で戦略を考え利益を上げる(プロセス3.5)
             1 買い手にとっての比類ないユーティリティ
                 バイヤー・エクスペリエンス・サイクル
                 バイヤー・ユーティリティ・マップ
             2 マスの取れる(売上を最大にできる)価格
                 プライス・コリドー・オブ・ザ・マス
             3 収益の取れるコスト
             4 導入(ブルー・オーシャン戦略の有用性を確認する)

       第8章 ブルー・オーシャン戦略の実行
             ティッピング・ポイント・リーダーシップ
               認識のハードルの克服 − 現状に浸りきった組織を変革の必要性に目覚めさせる
               経営資源のハードルの克服 − 経営資源の不足を補う
               士気のハードルの克服 − 従業員を奮い立たせる
               社内政治のハードルの克服 − 膨大な利害関係からの抵抗を排除する
             フェア・プロセス 戦略の完遂に大きく影響する手続きの公平性
               関与
               説明
               明快な期待内容
             開拓した新市場を継続的に維持する(模倣を防ぐ8つのメカニズム)
               1 業界の常識からはずれている
               2 ブランドイメージが損なわれる
               3 大手にとって、市場が魅力的ではない
               4 特許や法規制が障壁となる
               5 一気に巨大市場となる
               6 ネットワーク外部性が働く
               7 業務オペレーションや社風を変えられない
               8 高いブランド認知が障壁となる
             ブルー・オーシャン戦略を見直し、刷新する