『ニュースキャスター』   筑紫哲也 著

ニュースキャスター (集英社新書)

ニュースキャスター (集英社新書)



【所感】
・読みやすくて、すいすい2時間ほどで完読。

・NEWS23が始まったのが1989年。そこから2002年までの大事件を中心にまとめられた一冊。ニュースキャスターの本というよりは、ニュース編集長の本という方が適切かも。今となってはキャッチーさでは落ちるけど。時代的には、ニュース全盛期か。NEWS23をあんまり見てなかったから、ほとんど知らない話で新鮮。当然、筑紫さんの経歴や経験も知らず。知ってれば、NEWS23、もっと観ても良かったなぁ、と思った次第。

ニュースメディアにマーケティングが必要になってきた話の流れで、筑紫さんが何を考えてたのか、知りたいとか思って、手にしてみた。第13章「”生存視聴率”が成り立つ理由」という項で、触れてくれてるのだけど、印象としては、「マーケティングも、もちろん、当時なりに考えてたつもりだったけど、今思えばあんまり考えてなかったんだよね、あの頃って。考えなくても良い時代だったからね。」、という感想。マーケティングの理屈というよりも、ジャーナリズムの理屈がメインという印象強し。できれば、本書から6年経った今こそ、筑紫さんが何を考えてるのか知りたいところ。

(p213)
ニュース番組の「永遠のジレンマ」と呼ばれていることがある。作る側が「見せたい」と思うものと、視聴者が「見たい」と思うものとは必ずしも一致しない。・・・このジレンマの克服は容易ではないが、作る側の「見せたい」ものを、視聴者が「見たい」と思う水準に達するように、工夫と努力を重ねていこう、と私は言い続けている。
にもかかわらず、インターネットなど情報の多元化、迅速化、デジタル化の波が、テレビ報道のありように変容をもたらし、それは「見たい」という需要により対応する方向に比重が傾くだろうことも私は知っている。
・・・だが、洪水のようにたくさんの情報が多様な情報源から流れ込んでくる時代には、それをどう見ればよいのか、軽重の判断、取捨選択、解釈、さらには論評ですら、「情報」になりうる。そこまで求めているのは10人に1人の少数派かもしれないが、・・・、10%の視聴率は番組が「生存」するのに充分である。

【目次】

   第 1章 番組誕生
   第 2章 音楽の力
   第 3章 「北風型」と「太陽型」−インタビューの攻防
   第 4章 テレビは「小泉首相」を作ったか
   第 5章 「主持人」の周辺
   第 6章 大統領がやって来た
   第 7章 「モニカおばさん」のガツン
   第 8章 「赤い皇帝」の椅子
   第 9章 世界が変わった日
   第10章 「多事争論」のできるまで
   第11章 TBSが死んだ日−オウムビデオ事件をめぐって
   第12章 神戸震災報道
   第13章 ただの現在にすぎない仕事