『イノベーションのジレンマ 技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』   クレイトン・クリステンセン 著


イノベーションのジレンマ 増補改訂版 (Harvard Business School Press)

イノベーションのジレンマ 増補改訂版 (Harvard Business School Press)


【所感】
・10時間くらいっか。結構、かかってしまった。翻訳物だけど、そんなに読みにくくはなかったのに、なんか勢いがつかず、結構かかった。
・利益を最大化させる資源配分メカニズムが、特定の状況下では優良企業を滅ぼすことを説明してくれてる一冊。
・そもそもは、会社で、新規事業の必要性が高いのに、偉い人はその準備を考えてなくて、なんか提案を上げようと思い、その理論武装のために、読むに至ってみた。
・みんな書いてるけど、この本、ネット業界とかVC業界とか事業開発職とか経営企画職とか、ほんとに必読。これを知ってる人と知らない人の差は大きい、はず。本書の名前は、知ってたんだから、もっと早く、読んでいればよかった。
・この感動度合いは、『キャズム』『ライフサイクル・イノベーション』『競争戦略論(1)』『競争戦略論(2)』『企業参謀』『新・経営戦略の論理』とかの読後と同じくらい。だけど、内容が似てるとか、そういう意味ではなくて、それぞれの完成度の高さとかの話。



【『キャズム』との融合】
本書の中でも、『キャズム』に言及されるところがあるのだけど、本書と『キャズム』を混ぜた解説書とか、誰か書いてくれると嬉しいところ。「橋頭堡」と「新しいバリュー・ネットワーク」とか、たぶん、似たようなコンセプトだと。それぞれ、出発点となる著者の疑問が異なるので、分析対象とかも違うんだけど、被ってるところも多いわけで。
百歩譲って、この2つのコンセプトの上に、ネット業界を分析・解説してもらって、ネットサービスの事業開発における必勝法とか、誰か、本にして欲しい。ってーか、こっちの方が欲しい。



【大企業vsベンチャー企業
大雑把に言ってしまえば、破壊的技術を背景に、ベンチャー企業が大企業へ成長していく際に、競合となり得た大企業があった場合があるわけで、そういった場合に、その大企業がベンチャー企業に負ける絵ってのは、このジレンマの一例だと。で、本書によって、大企業におけるジレンマが解消されるようになってくると、今後は、独立系のベンチャー企業が大企業のベンチャービジネスに伍していくってのは、困難になるのだろうか?それとも、理論はわかっても、大企業がジレンマを解消するプロセスは、やはり大きな壁があるのだろうか?
個人レベルで考えれば、破壊的イノベーションを背景としたビジネスを志向する際に、ジレンマを解消しようとしている大企業で頑張るのと、いわゆるベンチャー企業で頑張るのと、どっちが成功しやすい、あるいは、働きやすいんだろうか?



【目次】

  序章
     ジレンマ
     すぐれた経営が失敗につながる理由
     失敗の理論の検証
     破壊的イノベーションの法則との調和
     破壊的技術の脅威と機会を正しくとらえるために


  第1部 優良企業が失敗する理由 
   第 1章 なぜ優良企業が失敗するのか − ハードディスク業界に見るその理由 
          技術革新の影響
          持続的イノベーション
          破壊的イノベーションのなかでの失敗

   第 2章 バリュー・ネットワークとイノベーションへの刺激
          組織とマネジメントにみる失敗の理由
          能力と抜本的な技術にみる失敗の理由
          バリュー・ネットワークと失敗の原因に関する新しい見方
          技術のSカーブとバリュー・ネットワーク
          経営上の意思決定と破壊的イノベーション
          バリュー・ネットワークの理論がイノベーションに対して持つ意味

   第 3章 掘削機業界における破壊的イノベーション

   第 4章 登れるが、降りられない
          バリュー・ネットワークと一般的なコスト構造
          資源配分と上位への移行
          バリュー・ネットワークと市場の可能性


  第2部 破壊的イノベーションへの対応
   第 5章 破壊的技術はそれを求める顧客を持つ組織に任せる
          イノベーションと資源配分
          破壊的技術と資源依存の理論

   第 6章 組織の規模を市場の規模に合わせる
          先駆者はほんとうに背中に矢を射られている
          企業の規模と破壊的技術のリーダーシップ
          事例研究−新しい市場の成長率を押し上げる
          事例研究−市場がうまみのある規模に拡大するまで待つ
          事例研究−小規模な組織に小さなチャンスを与える

   第 7章 新しい成長市場を見出す
          持続的技術と破壊的技術の市場予測
          実績ある企業による予測と下方移動は不可能

   第 8章 組織のできること、できないことを評価する方法
          組織の能力の枠組み
          資源−プロセス−価値基準の枠組みと持続的・破壊的技術への取組の成功との関係
          能力の移行
          変化に対応する能力を生み出す

   第 9章 供給される性能、市場の需要、製品のライフサイクル
          性能の供給過剰と競争基盤の変化
          製品はいつ市況商品になるか
          性能の供給過剰と製品競争の進化
          破壊的技術のその他の一貫した性質
          製品競争の進化のマネジメント
          正しい戦略、誤った戦略

   第10章 破壊的イノベーションのマネジメント − 事例研究
          技術が破壊的かどうかはどうやって知るのか
          われわれの製品、技術、販売戦略をどうするべきか
          破壊的イノベーションに最も適した組織とは

   第11章 イノベーションのジレンマ − まとめ

  『イノベーションのジレンマ』グループ討論の手引き