『H.ミンツバーグ経営論』 H.ミンツバーグ 著
- 作者: ヘンリー・ミンツバーグ,DIAMONDハーバード・ビジネスレビュー編集部
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2007/01/13
- メディア: 単行本
- 購入: 4人 クリック: 44回
- この商品を含むブログ (23件) を見る
【所感】
・6時間くらい。1章30分程度。翻訳が読みやすく、平易な表現も多いので、分厚さの割りにスイスイ読めた感覚あり。
・サーフィンしてたら、ミンツバーグが凄い!的な評価を見て、なんとなく手に取った一冊。丁度、組織とか戦略立案とかで悩んでいたのもあって、迷いなく購入してしまった。
・ドラッカーを初めて読んだ後と似たような読後感。ちょっと清清しくて、ちょっと?で、ちょっと解かったつもりで、またいつか、もう一度読みたい、そんな感想。
・もしくは、行動経済学とか感情経済学とかを、読んだときと似てるかも。現代経済学の限界とその要因、現代経営学の限界とその要因、という感じ?前者は論理的な側面が強いけど、後者は人為的な側面が強い気もする。また、後者は、経営学とするか、現代経営学とするか、現代MBA教育とするか、アメリカ経営手法とするか、微妙なところではある。そういう意味では、現代経営学の弊害とその要因、という感じかも。その顕著な事例として、か、著者のたまたまの研究領域だった、か、管理職、戦略、組織という3分野で解説してくれてる内容。
・一度、ビジネス本というかMBA本をカジッた人とかだと、良いかも。逆に、ミンツバーグ氏が批判の対象としているMBA系の内容を知らないと、本書の面白みは少ないかも。とはいえ、叩き上げの現場の棟梁や店長が、独立して、社員が50人とか100人とかになって読んで価値が無いのかというと、決してそんなことはないし、もっとしっくりいくのかもしれない。
・一番、古いのが70年代の論文なれど、全く古さを感じさせない内容。30年以上前に、こんな良いことを言ってくれる人がいたのに、それに対応できていない企業って、なんなんだ、一体!
【H.ミンツバーグ氏】
・ちょっと、ファンだな。補遺にもあったけど、アメリカでは、ドラッカー氏や大前氏と並ぶマネジメント・グールーとして評価されてるんだとか。
・ドラッカー氏の本を読んだ後の感じと似てんなぁ。
・伊丹先生、ヘンリー・ヨシと呼び合う仲だったとは。。。やっぱり、凄い方なんですね。
・あまのじゃく的なところが、素敵。常識として、偉い人が語ってる定説を疑って堂々と反論しているあたり。数字で、もしくは、立証することは困難かもしれないが、現実には、実際には、やっぱり、そうだよねー、とウンウンうなずく次第。
【目次】
第 1部 マネージャーの仕事(の分析)
第 1章 マネージャーの職務:その神話と事実の隔たり(75年・80年2月号)
マネジメントを縛ってきた4つの言葉(計画し、組織し、調整し、統制する)
マネジメント業務についての神話と現実
神話1:マネージャーは内省的で論理的な思考をする、システマティックなプランナーである。
現実 :どの研究を取ってみても、マネージャーはたゆみないペースで仕事をし、
その行動は簡略、多様、不連続を特徴としており、
さらに行動に出ようとする強い志向をもっていて、内省的活動を好まない。
神話2:有能なマネージャーは、遂行すべき決まった職分を持たない。
現実 :例外的な事項を処理するほかに、マネージャーの仕事には儀式や式典、交渉、
それに組織を周りの環境に結びつけるソフトな情報の処理など、
数多くの決まった職分の遂行が含まれていいる。
神話3:シニア・マネージャーが求めるものは集計的な情報であり、
それを提供するのに最適な手段は、公式なMISである。
現実 :マネージャーは口頭のメディア、すなわち電話と会議を重視している。
神話4:マネジメントは科学であり、専門的職業である。
現在はそうでないとしても、少なくとも急速にそうなりつつある。
現実 :マネージャーのプログラム−時間の配分や情報の処理、意思決定など−は、
マネージャーの頭脳の奥深くにしまい込まれている。
マネージャーの仕事の基本とは何か(10の役割)
フォーマルな権限と地位
↓
A.対人関係における役割(1看板的役割・2リーダー的役割・3リエゾン的役割)
↓
B.情報に関わる役割(4監視者としての役割・5散布者としての役割・
6スポークスマンとしての役割)
↓
C.意思決定に関わる役割(7企業家としての役割・8障害排除者としての役割・
9資源配分者としての役割・10交渉者としての役割)
対人関係における役割
情報に関わる役割
意思決定に関わる役割
統合化された職務
より効果的なマネジメントを目指して
「マネージャーの能力は、自身の仕事に対する洞察力によって大きく左右される。」
マネージャーの仕事を停滞させている原因 − 権限委譲のジレンマ
一人の頭脳に集中したデータベース
マネジメント・サイエンティストとの協力の問題
1.マネージャーは自身が所有する情報を分かち合う、
系統立ったシステムを確立するよう、求められている。
2.ここで再びマネージャーは、表面的な仕事に追いやろうとするあわただしさを
意識的に克服するために、真に関心を払うべき問題に真剣に取り組み、
断片的で具体的な情報ではなく、幅広い状況を視野に収め、
さらにまた分析的なインプットを活用するよう求められる。
3.マネージャーは義務を利点に変え、やりたいことを義務に変えることによって、
自分の時間を自由にコントロールできるように求められている。
マネージャーの教育
第 2章 計画は左脳で、経営は右脳で(76年・77年2月号)
ナスルディンのカギ
第一の質問
第二の質問
第三の質問
右脳のよる経営
組織の重要事項についての決定過程では、右脳の活動に代表される資質の働きに依存するところが
大きい。なぜなら、経営という行為の重要な部分が、計り知れぬほど複雑であり、奇怪であること、
マネージャーは、最も曖昧な情報に基づいて、しかも説明不可能な思考過程に頼って
行動しなければならないこと、からである。
この思考過程は秩序立っているとか、連鎖的であるというよりは、むしろ相関的であり
全体論的である。また、知的であるというよりは直感的である。
左脳への影響
プランナーと経営学者へ
マネージャーを教育する人たちへ
マネージャーへ
第 3章 プロフェッショナル組織の「見えない」リーダーシップ(98年・99年5月号)
指揮者の仕事ぶりからマネージャーの役割を学ぶ
コントロールするのはだれか
企業マネージャーと指揮者の類似点
リーダーシップとは、本来見えないもの
組織文化は生み出すものではなく、伸ばしていくもの
すべてをマネジメントする
精鋭集団をマネジメントする時に
マネージャーの役割モデル
第 4章 参加型リーダーのマインドセット(03年・04年3月号)
「マネージャーらしい発想」とは何か
5つのマネジメント・マインド
内省:自己のマネジメント
分析:組織のマネジメント
広い視野:外部環境のマネジメント
コラボレーション:リレーションシップのマネジメント
行動:変革のマネジメント
5つのマインドセットを縫い合わせる
マネージャーを育てる5つのマインドセット
第 5章 マネジメントに正解はない(96年・03年1月号)
企業経営に蔓延する「自己満足」という悪癖
マネジメントに関する10の考察
考察1:組織には頂点も底辺もない。
考察2:経営上層部のポストを減らすべき時が訪れた。
考察3:「合理的」とは「ケチ」という意味である。長い目で見ると合理化を進めても利益を上昇させることすらできない。
考察4:有効な戦略が生まれないのは、おおむねCEOが戦略家になったつもりでいるからである。
考察5:分権化は中央集権を強め、エンパワーメントは人々から権限を奪う。測定は何も測定できずに終わる。
考察6:偉大な組織は一度築き上げれば、偉大なリーダーを必要としない。
考察7:偉大な組織には「魂」があるが、「脱」「非」「再」などを冠した言葉はその魂を台無しにする可能性が高い。
考察8:従来型のMBAプログラムを廃止すべき時が訪れた。
考察9:組織に必要なのはたゆまぬ心配りであって、「余計な治療」ではない。
考察10:今日のマネジメントが抱える問題は、この論文の欠点に集約されている。
すべてを簡潔にまとめなくてはならず、深い探求ができないままで終わる。
第 2部 戦略(形成)
第 6章 戦略クラフティング(87年・87年11月号)
戦略プランニングか、戦略クラフティングか
戦略は未来の計画であり、過去の踏襲でもある
戦略は理路整然と意図され、計画されたものなのか
戦略は試行錯誤しながら形成されていく
プランニングと創発の共存
思いも寄らぬ方法が戦略を転換させる
量子的飛躍理論からの洞察
優れた戦略を創造するために
安定性を統御する
非連続性を察知する
ビジネスを理解する
各種のパターンをマネジメントする
変化と連続性を融合させる
戦略形成プロセスの研究
第 7章 戦略プランニングと戦略思考は異なる(94年・94年5月号)
戦略プランニングを過剰に信奉していないか
プランナーの仕事を再定義する
戦略プランニングの3つの誤謬
誤謬その1:予測は可能である
誤謬その2:戦略家は戦略課題と別世界に存在できる
誤謬その3:戦略策定プロセスは定型化できる
プランニング、プラン、プランナー、それぞれの役割
戦略プログラミングとしてのプランニング
コミュニケーション手段、管理手段としてのプラン
戦略の発見者としてのプランナー
アナリストとしてのプランナー
触媒者としてのプランナー
右利きのプランナーと左利きのプランナー
「形式化の縁」に立って
第 3部 組織(設計)
第 8章 組織設計:流行を追うか、適合性を選ぶか(81年・81年6月号)
組織構造の研究から何がわかるか
5つのコンフィギュレーション
単純構造
機械的官僚制構造
プロフェッショナル的官僚制構造
事業部制構造
アドホクラシー
組織診断ツールとしての各形態
内部要素に一貫性はあるか
外部統制は機能的か
適合しない要素があるか
構造は正しくても状況が変わっていないか
流行より適合を考えよ
組織形態の要素
構造要素
職務の専門化
行動の公式化
訓練と教育
ユニット・グルーピング
ユニット規模
計画と統制システム
リエゾン装置
垂直的分権と水平的分権
状況要素
組織の経過年数と規模
組織の技術的システム
組織の環境
権力
第 9章 オーガニグラフ:事業活動の真実を映す新しい組織図(99年・00年1月号)
新たな視点を提供するオーガニグラフ
オーガニグラフの基本概念
セット(集合体)
チェーン(連鎖)
ハブ
ウェブ
オーガニグラフの具体例
オーガニグラフの応用型:「国境なき医師団」
組織のハブとしてのコンピタンシー
マネジメントの位置づけを問い直す
第10章 政府の組織論(96年・03年1月号)
バランスの勝利
公共セクターと民間セクターの違いを超えて
顧客、クライアント、市民、そして被統治者
マネジメントにまつわる誤解
前提1:諸活動は縦横どちらの方向にも分割できる
前提2:業績は客観的な尺度によって的確に測れる
前提3:経営者やマネージャーに業績への責任と自律性を与えて、諸活動を任せればよい
政府のマネジメント−その5つのモデル
モデル1:機構モデル
モデル2:ネットワーク・モデル
モデル3:業績コントロール・モデル
モデル4:仮想政府モデル
モデル5:標準コントロール・モデル
民間企業礼賛への疑問
企業がすべて優れているとは限らない。政府が悪だとも限らない。
政府が企業から学ぶことがあるとすれば、それと同じだけ、企業も政府から学ぶことがある。
この両者は、共同所有組織、所有者のいない組織からも多くを学び取れるはずだ。
現在必要とされているのは、うつむき加減の政府ではなく、誇りを持った政府である。
何よりも、各セクターの調和が求められる。
補遺 アングロサクソン経営を超えて −インタビュー (03年1月号)
知られざる大家、ヘンリー・ミンツバー
アメリカ的経営の限界
MBA教育の弊害
脱二元論の組織観
脱カリスマ・リーダーシップの時代