『”新しい貧困”とニッポン 朝まで生テレビ』   テレビ朝日


【テーマ】

若年層の格差は「フリーター」、「ニート」、「ネットカフェ難民」などと表現される存在として定着し、拡大しているのが現実です。2007年度「労働力調査」によれば、年収200万円未満の労働者は正規、非正規雇用の合計で1700万人以上いるとされています。いわゆる「ワーキングプア」と呼ばれる層です。90年代まで日本は「一億総中流」と評されてきましたが、今ここに来て「新たな貧困」という社会問題に直面している状況にあります。
今回の「朝まで生テレビ!」では「ワーキングプア」、「格差拡大」等による社会問題を「新しい貧困」と位置づけ、その現状分析と生活再建を含む処方箋とは何か?その為に政治は、社会は何をするべきか?を様々な角度から徹底的に討論したいと思います。

番組での議論を省みながら、本件の論点を自分なりにまとめてみると、こんな感じか。番組で紹介されてる数字を拾ってないのが弱く、間違いがあるかもしれんが、そこは後日のテーマとしとく。




【”新しい貧困”の定義≒課題設定】
現象として、あれこれあるが、どうやら、こんな感じか。

     (若年層を中心とした)現在の世帯主(世帯)所得が少なく、また、今後の所得上昇の期待がもてない層

をもって、”新しい貧困”層と設定できるらしい。また、金額的には、個人年収200万円とか、世帯年収400万円とか、時給1000円とか、生活保護での受給額とか、あれこれ議論があるっと。これ決めないと話が進みにくいけど、決められないというか、これを決めるのって、まさに政治、正義、主義、思想だよなぁ。




【”新しい貧困”層と”旧来型”?貧困層の違い】
田原さん曰く、「戦後の高度経済成長の中で、日本には貧困層というものが無くなった」、とのこと。まさに、「1億総中流」。一部、若者は貧乏だったが、所得が向上していく期待はあったし、そのプログラムが社会的にも存在した、っと。
結局、規模が違うって事っか。1億総中流の中にも、貧乏な人はいただろうし、ただ、その規模が、今ほど大きく無かったこと、が問題としてとらえる理由っぽい。この規模の話は、数字で確認したいところ。




【”新しい貧困”層出現の経緯】
まとめると、こんな感じっか。ここらへん、とりわけ2の分配のあたりは、明確な数字がないことや、感情論もあって、意見が分かれてたなぁ。


1.マクロ経済の話
現象として、バブル崩壊グローバリズムの浸透、などなど日本経済の低迷があって、背景として、高度経済成長の枠組みでは対応できなくなったという日本の構造的課題があるっと。


2.1の状況下での企業を中心とした分配の話

A:企業の収入全体の分配  →  借金の返済(銀行)・配当(株主)・(設備)投資(企業)で、雇用者は後回し

B:雇用者間での分配    →  世代間・雇用形態間・企業規模間・業種間とか、論点が多く話がややこしい。
                 意見も多数。ある意味、一番のもりあがり、パネリストそれぞれの立場がよく出てた。

「デフレの進行をどう読むか」にも似たような記述があったようなオボロゲな記憶もあるし、渡邉さんも言ってたけど、どうやら、こんな感じらしい。

(1)スタートは、90年代前半、バブル崩壊で、全体の企業収入が減る一方で、もしくは、それが顕在化する手前の時点で、大企業を中心に、既に雇用されてた層(団塊の世代が象徴的)に、高度経済成長の労働的枠組みの中で、相対的に労働分配が高まる。

(2)企業はただでさえ苦しいのに、既に雇ってる人は切れないし(高度経済成長の経験から)給料はあげろとうるさい、結果、新入社員や非正規雇用者、下請け中小企業へと圧迫が行くっと。既に正社員となってる人は、なぜか、給料が上がり続けてる、らしい?

(3)(2)の波及がどんどん進行するっと。
       

3.1と2に対応する公的機関の話

(1)労働者保護が強い(給料の下方硬直性・解雇の困難性)労働法により、90年代前半の時点で、付加価値の低い正規社
員を切れなかった、という(正規雇用についての)労働法の問題

(2)退職者と使えないおじさん達の穴埋めを、本来やるはずの新入社員がいないから、企業は安い非正規雇用者へ多いに依存しだす90年代中ば以降、特に97年(だっけか?)の(非正規雇用者についての)なんとか法改正、っと。

(3)結果として、2000年以降?”新しい貧困層”が増加してくるのだけど、生活保護の枠組みも、実態として機能していないという生活保護の問題(広くは、労働保険とか労働訓練とか、そーいうのも含めた公的な対処療法というかセーフティーネットの問題か。)




【で、どうするか?】
ここの議論も紛糾してたけど、短期の話と中長期の話で、議論が平行線になるのが残念。両方、切実で大きな問題なだけに。

1.短期の話
”新しい貧困層”における目の前にある餓死やホームレス予備軍とかいった話は、政治がとりあえずの救済策を出す、という事か。番組では、この議論が少なかったなぁ。当事者は、この話をして欲しかったと思われるし。


2.中長期の話
大きく分けると、「(同一者の)所得があがらない」・「(世代をまたぐ)階層の固定化」・「機会の不平等」とかか。
解決する主体者としては、「公的機関(行政(国・地方)・政治家)」・「企業」・「個人(当事者・非当事者)」とか。

(1)全体のパイを増やす話
夢があっていいのは、高度経済成長のときのように全体のパイを増やす話。堀さんは、環境を含め製造業っと、世耕さんは、IT・金融だと。これは、これで、やらないといけない話。

(2)分配の話
全体のパイが増えても、分配の仕組みとして、”新しい貧困”層にまわるかは、別の話、という意見あり。確かにその通り。世耕さん、堀さん、松原さんあたりは、教育、を中心に言ってたな。これに対して、現場を知ってる人は、今、餓死するとか言ってるのに、教育と言われても困ってたというか、失望してた感じか。ここの短期・長期の食い違い、見てて、残念。
でも、まぁ、難しいよなぁ。分配いじっても、”新しい貧困”ゼロにできるのかなぁ?”貧困”もあるわけだしなぁ。




【所感】
なるほどねぇ。労働問題って、難しそうで関心がなかったけど、基本的には、全体のパイの問題と、その中での分配の問題に分けられるっと。

分配の問題の発端になった、団塊の世代が定年退職してるから、これで、一部、緩くならないかな。あ、でも、その結果、新卒採用は増えてるけど、”新しい貧困層”も増えてる?のか。企業のコスト競争は、どんどん激しくなってるということか。中国の台頭って、確かに2000年以降大きいしなぁ。

年収200万円でも生きていけるような物価というか生態系があれば、いいっちゃーいいのか。前の時代が裕福だっただけに、精神的な壁が高いけど、それで美味しいものを食べて安全であれば、ある意味いいわけだから。中国人とかブラジル人とか、安い給料でも、日本に来たがるわけだしなぁ。どっか、地方とかで、そういう方針とってみるとか。給料も安いんだけど、同じくらい物価も安いから幸せという地区。でも、今の地方って、事実上、そうかも。とか思うと、”新しい貧困”って、都市部の話か?この点は、番組で指摘がなかったなぁ。




【パネリスト】

奥谷 禮子(ザ・アール代表取締役社長、経済同友会幹事):しゃべりのテンポがうまくない。

世耕 弘成自民党参議院議員参院 議院運営委員会筆頭理事):基本的に悪くないんだけど、最後に、「私は政治家ですから。」といって、「事業計画をみてください。」「貸してくれる人を紹介してください。」というワーキングプアの叫びを切ってしまったのは、かっこわるかった。「わかりました。連絡ください。」と言えば(もちろん、紹介してあげて)、かっこよかったのに。

堀 紘一(ドリームインキュベータ会長):企業代表的なポジションっか。

松原 聡東洋大学教授、経済政策学)

渡邉 正裕マイニュースジャパン代表、元日経新聞記者):一番、この問題への取り組みへの真剣さとか必死さとか、が伝わってきた人。数字や経験の裏付けもあるようで、もっと話を聞きたいと思った。世代的な論点を提示してくれた。

龍井 葉二(連合非正規労働者センター総合局長)

河添 誠(首都圏青年ユニオン書記長)

湯浅 誠(反貧困ネットワーク事務局長、NPO法人「もやい」事務局長):真剣さを感じて、好印象。目の前の短期的な課題に軸足が重くて、この議論の場はかわいそうだった。

森永 卓郎(独協大学教授、経済アナリスト):わかってて茶化すというか、極論を出すというか、テレビ的には面白かったか。が、言ってる内容は、片手な感じで残念。

山井 和則民主党衆議院議員、党ネクスト厚生労働副大臣):二言目には、「だから民主党は、この法案を出してます」、というアピールになるのが、いただけなかった。そうじゃない議論ができないだけに、そのアピールが余計にせこく見えて世耕さんとの格の違い的にも見えてしまった。

雨宮 処凛(作家、非正規雇用を考えるアソシエーション会員):冷静かつ、現場を知ってる感が漂ってて、貫禄あり。番組の議論が、短期の課題を捕らえられないというところを現実的に受け止めて出演してる感じか。




【インタビュー】

勝ち組代表っぽい人:もしかして、Nさん?流れ的にコメントするの辛そう。この議論の中では、大企業のサラリーマン代表でコメント求められても、「自分は恵まれてました」、が限度っすよね。

団塊の世代:「最近の若者はガッツがない」・「解決策を政治に期待したい」、出ました!今の諸問題を作ってきた当事者であるこの世代の人たちにその自覚が無い典型的な二人がコメント。番組的には、丁度よかったんだろうけど、みてて、痛かった。

当事者:大変そう、辛そう、明日は我が身!あんな大変な仕事するなら、飲食店でアルバイトの方が楽だし、少なくとも賄いとかで食事は確保できそう、かつ、キッチンに入れば、将来は調理師へのステップアップもあるだろうに、それもできない障害があるんだろうなぁ。