『無印良品の「改革」 なぜ無印良品は蘇ったのか』  渡辺米英 著

無印良品の「改革」―なぜ無印良品は蘇ったのか

無印良品の「改革」―なぜ無印良品は蘇ったのか



【所感】
・時間的には、3hほど。字も大きくて、構成に一定のまとまりがあり読みやすい。が、構成にまとまりがある分、改革時の臨場感というか、お祭り感には欠ける。

・MBAコースとか勉強会などで経営改革のケースとして、使いやすいかも。ただし、経営の失敗に至る経緯や失敗の分析・立案のプロセスよりも、改革時の打ち手の内容に重点があるので、あなたならどうしますか?という打ち手を考えるケースというよりは、打ち手の有効性についての分析のケースの方に適している。

良品計画が、経営危機に陥ってた事自体を知らなかったので、いろんな意味で新鮮ではあった。でも、まぁ、やっぱ、当たり前のことを当たり前にやる、って事っか。それが、また、難しいのだけど。

・改革とは関係ないが、MUJIというのは、世界で通用しているブランドというのが、昔から凄いなぁ、と思っていた。珍しいし、国内でのコンセプトと海外でのコンセプトは、言葉にすると違うことになるのだけど、物としては、ほぼ同じ、というところが、素敵。




【事例の特徴】

事業概要:無印良品  SPA(衣料雑貨・生活雑貨・食品の3事業x国内・海外)

業績:良品計画IRサイト

時期・期間:社長交代(2001年1月)〜「完全復活」名言(05年春)やはり、トップの交代無しには始まらなかったか。

リーダー:偉い人だと、次の3人がインタビューに答えている。
         松井社長
         加藤氏(当初 衣料雑貨部長 → 生活雑貨部長)
         徳江氏(02年9月 店舗開発部長)


失敗の原因とプロジェクトテーマ:
下記なれど、この要因に至ったプロセスと改革テーマとして、これらを選ぶに至ったプロセス、それぞれ、詳しく書いて欲しかったなぁ。前者は、新任社長の分析とあるので、もしかしたら、自分で考えたのか。切り口的には、コンサルティング会社っぽくはないけど・・・。

      要因1 成功体験によるおごり
      要因2 むしばむ大企業病
      要因3 本質を忘れた目先の対応
      要因4 ブランドの弱体化
      要因5 店舗開発戦略の失敗
      要因6 トップの交代
      要因7 物づくり発想の揺らぎ
      要因8 ユニクロダイソーの出現(ニトリ・シマムラ)
 
     <2001経営改革プロジェクトテーマ>
       ビジネスプロセス改革
       現存店営業力の活性化
       賃料の適正化
       人事・教育
       顧客管理の一元化
       欧州事業の再建
       ブランディング

改革手法:
短期的な外科手術(不良資産の処理・赤字案件の撤退)と、ビジネスプロセス改革及びそれを通じた風土改革。
ビジネスプロセス改革では、川上寄りの衣料雑貨事業と生活雑貨事業と、川下寄りの出店戦略改革・店舗運営改革が中心。とりわけ、海外事業については、+アルファあり。ビジネスプロセス改革では、見える化が鍵っぽい。



【疑問】
・当時の株主構成が不明ではあるのだけど、改革時の大株主との関係はどうだったのだろうか?大企業らしい邪魔はなかったか?フォローはどうだったのか?結果として、三菱商事が事業会社として筆頭株主になっているが、当時の経緯と何か関係があるのだろうか?

・改革における抵抗勢力は存在しなかったのだろうか?社歴も20年とかで、恐らく、若い人が多かっただろうこと、若い人が多いだけに、経営不振時に抵抗するような人は辞めてっただろうこと、などから、少なかったのかも、とも思うが・・・。

・現場の混乱の度合いとその収束、カオスの縁はどこらへんにあって、どんな感じだったのだろうか?




【関連リンク】
無印良品
良品計画



【目次】

序章  新たな「無印神話」の始まり

第1章 無印良品の誕生と急成長

第2章 順風満帆、そして蹉跌へ

第3章 「凋落」を招いた8つの要因
       1 成功体験によるおごり
       2 むしばむ大企業病
       3 本質を忘れた目先の対応
       4 ブランドの弱体化
       5 店舗開発戦略の失敗
       6 トップの交代
       7 物づくり発想のゆらぎ
       8 ユニクロダイソーの出現

第4章 改革は衣料品から始まった(衣料雑貨部門改革)
       衣料品の持ち越し在庫一掃(01年8月期中間決算)
       フランス社の店舗は1年で半数に(01年)
       キーワードは「見えて、計れて、手が打てる」(業務フロー改善02年〜)
       「経営改革プロジェクト」による在庫コントロール(組織再編・権限と責任の明確化01年?)
       ヨウジヤマモト社との提携で商品に新しさ(01年6月〜)
       「シンプルなルール」で組織を動かす仕組み(02年〜)

第5章 物づくり手法が進化する(生活雑貨部門改革)
       新しい物づくりの手法を探れ!
       ネット活用や自宅観察による商品開発(01年〜)
       「ワールド・ムジ」−世界的デザイナーが匿名で提案(03年〜)
       「ファウンド・ムジ」−世界の優れた日用品を発掘)(03年〜)
       本部と店舗の信頼関係を取り戻す4つの改善(04年6月〜)
       売れない商品を増やさない在庫コントロール

第6章 新たな出店戦略がスタート(出店戦略改革)
       しまむらに教えを受けた店舗開発の仕組み(02年9月)
       出店が可能なのは150都市圏
       1年かけて完成した「出店基準書」(03年8月完成)
       しまむら会長の助言で出店検討会も一変
       地方の小商圏マーケットにもチャレンジ!      
       ヨーロッパの出店戦略も大転換(01年〜)
       中国本土に進出(05年7月)、MUJIのニセモノ店に勝訴(06年8月)
       香港は再進出で若者の人気ブランドに
       いよいよニューヨークに1号店をオープン!(07年5月予定)

第7章 コスト激減の「30%委員会」(コスト削減運動)
       「仕事をなくす、効率化する、生産性を高める」(05年2月〜)
       監査室の生産性はいきなり8倍に
       店頭業務をゼロから考え直せ
       商品タグの種類も思い切り減らせ
       無印良品が背負っている経費の構造
       物流センターは「通過型」へと大きくシフト
       改革を支えた情報システム
       システム経費率は2年で1%未満へ

第8章 売り場の仕事が変わる!(店舗運営改革)

終章  良品計画の今後と課題
       やがて「無印コンビニ」も登場する?!
       食事の分野に再チャレンジ
       ファンの裾野を広げるターゲット戦略
       新たなイメージづくりにテレビCMも
       家具のイデーを買収、期待される住宅事業

あとがき

資料  無印良品の沿革