『ヒット企業のデザイン戦略 イノベーションを生み続ける組織』 クレイグ・ボーゲル/ジョナサン・ケーガン/ピーター・ボートライト著
ヒット企業のデザイン戦略 イノベーションを生み続ける組織 (ウォートン経営戦略シリーズ)
- 作者: クレイグ・M・ボーゲル,ジョナサン・ケーガン,ピーター・ボートライト,スカイライトコンサルティング
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2006/06/19
- メディア: 単行本
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【所感】
・2006年の本。5時間くらいで読破。翻訳、読みやすい。登場事例が米国のものなれど、翻訳が読みやすくて、良し。敢えて言えば、そもそも内容が概念的なものよりも事例が多いということで翻訳のしやすさはあるのかもしれん。いずれにせよ、非常に読みやすい。
・本書は、「普通の社員がいかにして革新的な商品を作るか?」ということについて、ビジネスマンに対して、イノベーションとデザインを、「人」と「組織」と「プロセス」の観点から解剖し、解説したもの」、だそうな。ざっくり言うと、イノベーションは目指さないとできません、という感じか。
・フレームワークを提案する的な説明があるのだけど、デザイン戦略なり継続的なイノベーションのフレームワークとしては、他著の方が実用的な印象。自分にとっての本書の価値は、事例集にあるような。といっても、米国事例がメイン。逆に言えば、内需系企業で米国の動向に疎い人は、日本の事例は多かれ少なかれ見聞きしてるだろうから、アメリカにはそんな会社もあるんだぁ、と目新しい、かも。デザイン戦略とかイノベーションについて、さぁ、これから勉強します、とか、勉強したい、というような人が一冊目に読むのに、最適な感じ。
【本書での定義】
「デザイン」:
エンジニアリング・デザイン、インターフェース・デザイン、産業デザインなど特定分野の説明に用いる言葉であると同時に、人間の問題解決による変革を表す、幅広いコンセプトでもある。本書が目を向けるのは、イノベーションを起こす新たなデザインだ。
「イノベーション」:ドラッカーの言う「イノベーション」に近い印象
新しい技術の発明だけに留まらず、インサイトに基づく活用、商品化、機能拡張、既存技術との組み合わせなどを含む。重要なのは、企業から見て何かが増えたということではなく、顧客からみて価値のある飛躍であることだ。
【関連リンク】
翻訳会社スカイライトコンサルティング
【目次】
プロローグ、1、2、3、がまとめで、4以降は、イノベーションの側面とかケースみたいな構成。
プロローグ イノベーションは誰が起こす?
1 新時代のイノベーター
2 残された唯一の道
3 イノベーションをデザインする
4 トレンドをデザインする
5 ファンタジーをデザインする
6 ステークホルダーをデザインする
7 B2B製品をデザインする
8 意思決定をデザインする
9 商品機会をデザインする
10 知財戦略をデザインする
11 チームをデザインする
エピローグ イノベーション・パワー
1 新時代のイノベーター
フォード − スタイリッシュ・カーへの転換 ディー・カプール氏
1.イノベーションと大胆さを企業文化の一部にする。
2.頻繁かつ可能な限り多くの形で、模範となるイノベーションを示す。
3.イノベーションを育てるマネジメント・プロセスを設ける。
ワールプール − 白物家電からの脱却 チャック・ジョーンズ氏
1.時間・場所・資金などの経営資源をイノベーションの探求に使えるようにしておく。
経営資源の20〜30%はイノベーションに当てる。
2.イノベーションの創出ルートがうまく稼動するために経営資源を使う。
グループは年に何百ものアイデアを創出し、何十もの有望なアイデアを検討し、
その後、市場投入の候補となる商品やブランドを十件程度に絞り込む。
3.どのアイデアが企業の事業に適合するか厳しく判断する。
4.誰もが成功に貢献するチャンスをもてる環境を創り出す。
いくら才能豊かな人材を集めてチームを作っても、その才能を活用しなければ無意味である。
5.イノベーションを追跡調査し、その影響力を理解し、
それを企業全体に見えるようにすることで、グループの価値を明確にする。
6.学識と世間を生き抜く知恵を兼ね備えた人物を雇用する。
彼らは右脳と左脳の両方を使うことができる。
ニューバランス − 顧客中心のデザイン エディス・ハーモン氏
1.経営資源を利用可能にする−時間や予算だけでなく、失敗の自由も与える。
2.際立ったスキルを持つ個人を集めてイノベーション・グループを作る。
そして、各人のアイデアの価値を認め、グループ内で互いに尊敬しあえるよう議論を戦わす。
3.グループ内で自主性を養い、信頼感に根ざした積極的な参加と、
プロセスや目標を楽しくことを奨励する。
イノベーターになるには?
イノベーションで重要なのは、人々のニーズ、ウォンツ、願望を正しく理解すること
イノベーションは、自ら徹底的に考え抜く必要がある。
3 イノベーションをデザインする(事例:アディダス・ワン)
全てはインサイトから始まる
商品開発の初期段階での課題は、問題解決ではなく問題の特定であり、機会を発見し理解すること
曖昧さを受け入れる
本能に従え
イノベーションの基本プロセス
戦略的に重要な階層を特定する
顧客像についてリサーチする
機会を定義する
デザインの基準を定義する
基準を満たす
次の段階に進めるかどうか決定する
基本ルール イノベーターの思考回路
1.この方法論は、ユーザーに「考える」ことを要求する
2.この方法論は、アイデアを大量生産するものではない
3.企業は結果よりもプロセスに対して投資すべきである(成功しても立ち止まらない)
4.この方法論には、知性だけでなく、モチベーションが求められる
4 トレンドをデザインする(事例:MP3/iPod・ミラチェア)
キャズムを超える
SET要因でトレンドを読む(社会・経済・技術)
トレンドの波には逆らえない
ヒントは日常のなかにある
5 ファンタジーをデザインする(事例:ハリーポッター・OXO))
経験経済からファンタジー経済へ
ファンタジーとは、少なくとも現時点では現実となっていない、魅力的な経験
形状にメッセージをこめる
日用品にもファンタジー
ファンタジー志向が企業を変える
イノベーションは、魔法や運ではなく、ある商品がユーザーのためにできることの可能性を
追求するという、地道な取り組みの成果である。
6 ステークホルダーをデザインする(事例:ルブリゾール)
技術志向から顧客志向へ
パワーズ・オブ・テン分析
1.分子 2.混合 3.混合装置 4.システム・オペレーション
5.コミュニティ 6.地域 7.大陸 8.グローバル環境
リアルな人物像を描き出す
7 B2B製品をデザインする(事例:レッドゾーン・ロボティクス)
最後のフロンティア
B2Bのファンタジー
「ファンタジー」とは、既存製品では考えられなかった、高付加価値のユーザー経験だ。
3つの戦略
1.ステークホルダーを特定し、理解する
2.製品戦略を立案する
3.全社戦略を立案する
イノベーションや専門性、ユーザーの重要性は、あくまで製品によって表現することを目指す
製品にブランドメッセージをこめる
「イノベーション」とは、「市場に参入し、顧客ニーズを予想し、彼らの生活を向上させる製品
やサービスをまとめあげる能力」である。
産業の未来を創る
8 意思決定をデザインする
複雑で膨大な意思決定をコントロールする
イノベーションとは、単なる良いアイデアではなく、相互に絡み合う複数の意思決定を一定時間内
に行いながら、大勢の人々をマネジメントするプロセスである。
トレードオフへの対処
バタフライ効果
カオスを歓迎せよ
成功を導く意思決定
9 商品機会をデザインする
産学連携によるイノベーション
ケーススタディ:肥満者市場を開拓する
フェーズ1:特定
フェーズ2:理解
バリュー・オポチュニティ(価値機会)
感情・人間工学・美的感覚・アイデンティティ・
社会的影響・コア技術・品質
現場で顧客を理解する
フェーズ3:コンセプト化
フェーズ4:実現
11 チームをデザインする
なぜ失敗するのか?
IDEO − エンジニアリングとデザインの融合
社外コンサルタントを活用する
リサーチからインサイトを得る
ソフトとハードのバランスをとる
多様性を活かす