『ベイジン』   真山仁 著

ベイジン〈上〉 (幻冬舎文庫)

ベイジン〈上〉 (幻冬舎文庫)

ベイジン〈下〉 (幻冬舎文庫)

ベイジン〈下〉 (幻冬舎文庫)


 
【所感】
『マグマ』から(気持ち的に)連続で真山本。
 
・これは、なかなか、というか、かなりの大作、というか、とにかく、面白かった。途中、2箇所くらい震えてしまった。ついでに、泣きそうにもなった。という感じで、上下巻、あっと言う間の10時間、一気読みしてしまった。
 
・舞台は、中国、原発、オリンピック、賄賂。時代は、天安門事件のあたりを基点に、メインは2005年〜2008年、といったところ。
 
村上龍だっけか、誰かが、「日本にはなんでもあるけど、希望だけが無い」、っと。誰かが、「日本には希望が無いというが、ロシアには絶望しかない」って、書いてたような記憶あり。本作では、「中国は、ずっと希望が無くて、まだ微妙だけど、ようやく希望が見えてきた。」といった感じか。そういう意味では、「日本には、ずっと希望があって、今でも何でもあるけど、希望だけが無くなった。」というのが正確か。
 
・米英を知らないからあれだけど、社会的に希望が持てない国って、もしかして、社会主義国家だか共産主義国家だけの話?だとしたら、やっぱ、日本は、そっち寄り?ちなみに、江戸時代とかって、希望があったのかな?
 
原発については、311後の今日だけに、ちょっとホット。福島原発とか国内の原発も、こんな感じなんだろーか。たぶん、そうなんだろうと思う。建設中と運用中、エンジニアリング会社の人と電力会社の人、という違いはあっても、電気屋の矜持というのか、現場力というのか。小説だから、顔はわからないのだけど、きっと、厳しいけど素敵な顔なんだろう、っと、勝手に想像。
 
原発を「神の火」というのは、表現として素敵な印象。
 
・中国、この小説の中に出てくる話は、どこらへんまで事実なんだろ?固有名詞とかは別として、ストーリーとしては、似たような事実が、その辺に転がってるんだろーね。ちょっと、天安門事件の内容とか背景とかを知らなさ過ぎて、残念。日本における学生紛争とは違うのか?同じなのか?アヘン戦争あたり以降の中国近代史は、一度、まとめて、読んでみたいところ。
 
・オリンピックと万博が、国家における成人式 → 興奮、言われれば想像できるけど、その時代を生きてきた人のそれは、やっぱり想像が付かないかも。感慨深いというか、ある意味、坂の上の雲的なのか。明治維新 → 日露戦争勝利、太平洋戦争敗戦 → 東京オリンピック+大坂万博 という感じ?だとしたら、日本は、2回、成人式したのか?成人式後の日本は、そのあと、かなり調子に乗りすぎた、しかも2回とも、わけで、そういう点で、中国はどうなるんでしょーか?調子にのった日本をみてるから、為政者は、調子に乗らないようにするのか?為政者がいくら知恵を絞っても、国というか、(超)群集心理的には、やはり調子に乗ってしまうのか?
 
・そろそろ、国家ってのは、役目が終わり、というか、国を捨てる人達、国に依存せずに生きていく人達が、どんくらいの規模になったら、そのティッピングポイントとなるのか?